研究実績の概要 |
緑内障は中枢神経系の障害であり、中枢神経細胞保護・二次変性予防・他細胞への悪影響の回避が中枢神経障害を治療していく上での重大な研究課題である。我々はこれまでに、脳梗塞組織が全身の諸臓器に悪影響を与える可能性があることを示唆した(H Ishikawa et al. Stroke, 2013)。中枢神経細胞が障害を受けると、隣接した細胞のみならず、全身にも波及し他の細胞を傷害する。本研究では、培養中枢神経を用いたin vitro脳梗塞モデルを用い、他細胞への障害を誘発する液性因子と思われる物質を同定し、将来的にはその阻害剤を開発することによって緑内障・脳梗塞をはじめとした中枢神経系疾患の新しい治療薬を開発することを目的とする。 平成27年度は前年度に引き続き培養実験を主とし、ラット大脳皮質・網膜細胞を用いた組織培養用を確立した。これまでに約40バイアルのラット大脳皮質細胞の組織培養を行い、in vitro 脳梗塞モデルである Oxygen Glucose Deprivation (OGD)モデルの条件設定を行った。多数の培養実験を繰り返し、ようやく安定した細胞死を得ることができ(モデルの安定化)、培養上清特定実験という次の段階に進行した。この上清内にあるタンパク特定において、コントロール群とOGD群を比較したところ残念ながらタンパク量そのものの差は認められず、OGD群に有意に認められる液性因子の同定は不可能であった。この結果は逆に、細胞虚血状態において、その生存反応に呼応するメカニズムは細胞から細胞外への液性因子の放出ではなく、細胞間インタラクティブである可能性が高いということを示唆する。
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