研究課題
バルプロ酸は抗てんかん薬として世界中で広く使用されており, 近年では神経保護効果をもつ可能性が指摘されている。 そこでバルプロ酸が網膜神経節細胞の保護薬として有効か検討した。バルプロ酸は網膜のグリア細胞における神経栄養因子(BDNF)の発現量を上昇させることから、BDNFの受容体であるTrkBが網膜神経節細胞から欠損するマウスで同様の毒性実験を行った。その結果、バルプロ酸の神経保護効果が大きく減少したことから、バルプロ酸による神経保護作用にはBDNF-TrkB経路が関与することが明らかとなった。(Kimura et al., Am J Pathol, 2015)。次に正常眼圧緑内障モデル動物に対してバルプロ酸を毎日投与したところ、治療開始から2週後には網膜神経節細胞死の抑制が観察され、視機能障害の進行も予防できることが分かった(Kimura et al., Neurosci Lett, 2015)。以上から既存薬であるバルプロ酸の神経保護作用が緑内障治療にも有用な可能性が示唆された。一方、Dock8欠損マウスを用いた解析から視神経炎症における視機能障害の重症化にはDock8が大きく寄与していることを見出している。Dock8は免疫系細胞で強く発現するが神経細胞ではその発現がほとんど認められない。したがって、Dock8欠損マウスにおける視機能障害の軽症化は、免疫抑制を介した間接的な神経保護効果であると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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