研究実績の概要 |
今回の解析対象患者は組み入れ基準を満たし3年間の観察を終了している日本人の正常眼圧緑内障(NTG)患者90名90眼とした。以下、検討を行った解析結果に関して述べる。 (1)進行のリスクファクター解析:Cox比例ハザードモデルを用いた重回帰分析を使用し、共変量として、性別、年齢、屈折、BMI(body mass index)、角膜厚、(拡張期)眼潅流圧、MD(mean deviation)、PSD(pattern standard deviation)、乳頭出血の既往、平均眼圧、平均眼圧変動、を挙げた。結果(リスク比、P値):性別(1.03, 0.27)、年齢(0.79, 0.59)、屈折(1.04, 0.64)、BMI(1.06, 0.46)、角膜厚(1.00, 0.86)、眼潅流圧(1.00, 0.79)、MD(0.74, 0.082)、PSD(0.80, 0.12)、乳頭出血(1.78, 0.21)、平均眼圧(0.92, 0.66)、平均眼圧変動(0.93, 0.91)であり、進行に関与する因子の特定には至らなかった。 (2)緑内障進行の生命表解析:視野の悪化または視神経乳頭の悪化を「死亡」と定義し、Kaplan - Meier 法による生命表を作成した。結果:3年間で27眼が進行し、3年間の生存率は約67%であった。 (3)視野進行の悪化速度:進行群の視野全体の悪化速度をMD slope(dB/year)、視野全体を4分割した局所視野の悪化速度をTD (total deviation) slopeとして計算した。結果:進行群のMD slopeは、-0.62dB/year(95%CI:-0.93~-0.31, P<0.001)であり、上方アーケード視野のTD slopeが-1.32dB/year(95%CI:-2.04~-0.59, P<0.001)と比較的速い悪化を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)全体の観察期間は5年間を計画しており、今後も脱落者をできるだけ出さないように、施設担当者と連絡を取り合いながら患者管理を継続していく必要がある。しかし、やむを得ない経過観察時のトラブル(ドロップアウトなど)は、その理由をしっかりと把握し、これを記録しておく。また、患者側の都合などで、規程通りの間隔でデータが収集できない場合でも、データの欠損を最小限にするように、患者へ研究協力を要請し、できるだけプロトコールに準じるような検査を継続する努力を行っていく。 (2)NTGの進行リスクファクターに関しては、眼圧以外の因子に関しての探索も進めていく。具体的には、視神経乳頭の構造解析(画像解析ソフトを使用した定量的評価)、日常診療では評価できない生活習慣因子(アンケート調査)を行い、進行解析に組み入れていく。 (3)リスクファクターで挙げた各因子(眼圧や屈折、角膜厚など)がセクター別に分割した視野(一例としてSuzuki Y, 2001, J Glaucoma、など)にどのような影響を及ぼしているか、重回帰分析を用いて検討する。 (4)今回は一症例一眼で検討を行ったが、組み入れ基準を満たす症例に関しては、一症例二眼で組み入れることも検討していく。
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