研究課題/領域番号 |
26861488
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
田中 奈々 順天堂大学, 医学部, 助教 (50530656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒルシュスプルング病 / 腸管神経系 / 神経堤細胞 / ラミニン / 細胞外マトリックス / ライブイメージング |
研究実績の概要 |
SOX10-VENUS Tg (ヘテロ接合:+/-) マウスと H 病モデルマウス EDNRB(ヘテロ接合:+/-)の交配を行い、SOX10-VENUS(+)/ EDNRB(-/-)マウスを作製し、HDモデルとした。また、SOX10-VENUS(+)/ EDNRB(+/+)マウスをコントロールとして使用し、H病腸管におけるラミニンの発現と分布の解析、コントロールとの比較検討を行った。 胎生13.5日と胎生16.5日の腸管各部位(中腸、近位後腸、遠位後腸)における腸管神経堤由来細胞の移動(以下ENCC migration)の評価及びラミニン‐1の発現をHDとコントロールとで比較した。ENCCのmigrationの先進部は、コントロールでは、胎生13.5日には遠位後腸に到達しているのに対し、HD腸管ではまだ中腸にとどまっていた。胎生16.5日になると、コントロールではすでにENCCは腸管遠位端まで到達していたが、HDでは、まだ遠位後腸にあった。部位別(中腸、近位後腸、遠位後腸)におけるラミニン-1の発現は、胎生13.5日では、全ての部位においてHD群でコントロールに比べ高く発現していた。両群とも、13.5日のENCC先進部にて高く発現しておりその後ENCCの支配が完了すると発現が低下する、という同一の傾向がみられた。しかしながら、胎生16.5日になっても無神経節腸管であるHDの遠位後腸においては、ラミニン-1の発現が高いままであった。 すなわち、通常は、ラミニン-1の発現が上昇がENCCのmigrationに先行し、神経支配後にはその発現が低下すること、 ENCCのmigrationが停止するHDでは、無神経節腸管でラミニン-1の発現が高いままとなっていることが示された。以上の結果より、ENCC migirationは時間的空間的なラミニン-1の発現の変化に制御されており、HDではそれが変化していることにより、無神経節腸管となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しいヒルシュスプルング病モデル作製が順調に進み、動物の確保が安定してきたため、初年度に計画していた、病気モデルにおける、各発達段階でのラミニンの発現を評価することが可能であった。またその研究発表も行った。ラミニンの発現の評価に関しては、in situ hybridizationのセットアップに時間を要しているため、今年度は免疫染色での評価のみにとどまってはいるが、おおむね計画通りに実験が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立されたモデルを用いて、H 病腸管における、ラミニン神経発達促進効果の検討を行う。 また、初年度の結果を発展させ、ラミニンの腸管組織における発現分布を調査する。それらの結果をもとにして、ラミニンの投与時期・投与方法の検討を行う。 まず、H病モデルの腸管神経系の発達における、ラミニンの効果を調査するため、培養環境下にて器官培養を行う。ラミニンの添加方法に関しては、申請者らの報告に準ずる。具体的には、リアルタイムイメージングにて経時変化(共焦点レーザー顕微鏡で10分間隔、12時間)を撮影し、それぞれの神経堤細胞の遊走の速度とベクトル、移動量などを 神経細胞の動態を解析するためのソフト(Imaris,ZEISS社)にて解析する。 また、組織におけるラミニンの発現分布を免疫染色・in situ hybridization にて検討する。 最後に、これらの結果を基にして、生体マウスへのラミニンの投与方法の検討し、最も有効なラミニンの投与時期と投与方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
in situ hybridizationを用いての、ラミニンの発現分布を調査する予定であったが、セットアップ等が間に合わず、今年度は免疫染色での評価のみにとどまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
ラミニンの発現分布の詳細をin situ hybridizationを用いて行う。 また、ラミニンのサブユニット別に、より詳細な発現を調べる。
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