研究課題/領域番号 |
26861488
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
田中 奈々 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50530656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒルシュスプルング病 / 腸管神経堤細胞 / ライブセルイメージング / 腸管神経系 |
研究実績の概要 |
今回我々は、ENCCが蛍光標識されたトランスジェニックマウス(Sox10-Venus Tg)と、エンドセリンレセプターB(Ednrb)欠損マウスを交配し作製された、ENCCが可視化できるHDモデルマウス(Sox10-Venus+/Ednrb-/-)における、ENCC先進部の動態を蛍光ライブイメージング法にて観察し、その速度と方向性の解析を行った。胎生15.5日齢のSox10-Venus+/Ednrb-/-のマウスと胎生12.5日齢のコントロールマウスの後腸を実体顕微鏡下で摘出した。培養環境下で、共焦点レーザー顕微鏡(LSM)を用いた蛍光ライブイメージング法にて360分間リアルタイムに観察した。腸管の長軸をY軸とし、高精細3D/4D画像解析ソフトを用いて、先進部における個々のENCCをX,Y,Z座標上にてトラッキングし、解析した。 コントロール腸管における平均移動速度は248.29マイクロm/hであったのに対し、HD腸管では72.87マイクロm/hと著明に低下していた。しかし、Y移動距離/XZ移動距離、すなわち、短軸方向に対する肛門側への移動の割合は、2群間で有意差はみられなかった。 HDマウスの後腸におけるENCC先進部の移動速度は、コントロールに比べ著明に低下するものの、その方向性に有意な差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H病腸管における、ラミニンの神経発達促進効果の検討を行うにあたり、それに先立ち、神経発達効果を評価するための方法として、腸管神経堤細胞の、方向性を含めたより詳細な動態の情報を得るため、従来の2次元解析ではなく、3D4D解析ソフトを用いて、コントロール腸管とH病腸管とを比較した。(研究計画B-1,2,3をまず、コントロール腸管とH病腸管で検討を行った。) したがって、本年度中に、本法を用いてH病腸管における、ラミニンの効果を検討するまでは至らなかったが、より詳細な情報が得られる本法を確立することにより、次年度より、本法を用いてH病腸管におけるラミニンの効果を検討することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本実験で使用したSOX10-VENUS Tgマウスは、①胎生期から成体まで②生きたまま③明るい蛍光シグナルで④免疫染色などの病理組織学的手技を加えずに神経堤細胞が観察できる、という4つの大きな利点を持っている。H病モデルマウスをかけあわせることにより、H病における神経ネットワークの形成及び無神経節部腸管の発生過程をライブイメージングで観察することが可能である。その培養液にラミニンを加えることで、生きたまま、H病腸管における、ラミニンの効果を可視化することができる。さらに、この実験系が確立されれば、これまでH病との関連を示唆されてきた、他の細胞外マトリックスや細胞増殖因子に関しても、比較的容易にその効果を次々と試すことができるという、実験系としての将来性も秘めている。一方、ENCCの動態は、ライブセルイメージング法により徐々に解明されつつあるが、多くは2次元解析であり、より詳細な動態を得るには限界があった。今回我々は、ENCCが蛍光標識されたトランスジェニックマウス(Sox10-Venus Tg)と、エンドセリンレセプターB(Ednrb)欠損マウスを交配し作製された、ENCCが可視化できるHDモデルマウス(Sox10-Venus+/Ednrb-/-)における、ENCC先進部の動態を蛍光ライブイメージング法にて観察し、その速度と方向性の解析を3D4D解析ソフトを用いて解析を行った。本法により詳細なENCCの動態を追跡することが可能となり、HDにおける神経堤細胞の動態の新たな解明が今後も期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に施行する予定であった、H病腸管に対するラミニンの効果に関する検討を次年度施行予定としたため、そのための備品の購入を先送りしたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
H病腸管に対するラミニンの効果の解析のための備品等を購入の予定。
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