前年度までの研究にて、我々は、ヒルシュスプルング病(H病)マウスモデルの胎仔腸管(後腸)の器官培養を行い、タイムラプスイメージングにて得られた画像を高精細3D4D解析ソフトにて解析し、H病モデルマウスにおける腸管神経堤由来細胞の動態を、3次元で評価した。本年度は、器官培養に加え細胞培養を施行し、細胞レベルでの、H病モデルマウスにおける腸管神経堤由来細胞の動態の研究を行った。胎生13.5と15.5日のSox10-Venus+/Ednrb-/- マウス(H病モデル)及びSox10-Venus+/Ednrb+/+マウス(コントロール)から胎仔腸管(後腸)を採取し、Venus陽性の腸管神経堤由来細胞のみをFACS(fluorescence-activated cell sorting)を用いて遊離し、7日間培養した。SOX10-VENUS陽性細胞は、ニューロスフェアを形成していたが、H病群のニューロスフェアの細胞数はコントロールに比べ、有意に減少しており、細胞増殖が妨げられていることが示された。また、GFAPの発現はH病群で有意に亢進しており、グリアへの分化が亢進していることが示唆された。一方、ニューロンのマーカーであるPGP9.5の発現2群で差がなかった。以上より、H病では、腸管神経堤由来細胞の、グリアへの分化が亢進し、増殖が妨げられており、分化・増殖の不均衡が生ずることにより、正常な腸管神経系の構築が妨げられている可能性が示唆された。
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