本研究は、小動脈栓塞症(心筋梗塞)、虚血性病変(糖尿病性下肢潰瘍)、皮弁移植などの外科治療に欠かせない自家移植血管を代用する高機能自家組織化小口径人工血管の開発を目的とする。 26年度までの成果は:SDSと超音波洗浄の併用は有効な小動脈脱細胞処理法だと確認できた。内外二重循環の自動化脱細胞装置が効率よく脱細胞処理をできた。径0.8~1㎜の血管移植では脱細胞血管の開存が難しい。MPC加工は組織吸収反応を惹起するため、脱細胞血管に不適切だと判断した。 今年度次のような内容で研究を実施した:生体由来臓器と組織用自動化脱細胞装置の後期開発(改善)を実施した。脱細胞血管片に細胞培養を試み、細胞親和性を評価した。低分子ヘパリンを脱細胞血管に固定する実験を実施した。低分子ヘパリン固定化脱細胞血管の移植実験を実施した。実験モデルとしてラット総頸動脈と大腿動脈の違いを検討した。 結果:脱細胞処理のdebrisが外循環で血管外壁に吸着するため、自動化脱細胞装置に粕取りの網機構を加えた。脱細胞血管片に繊維細胞が良く生着した、優れる細胞親和性を示した。蛍光色素結合ヘパリンを脱細胞血管片に散布して、良い固定率が観察された。低分子ヘパリン固定化脱細胞血管のラット大腿動脈移植実験では、全例栓塞した(6/6)、RDGなどの接着因子と共同内面処理を試すべくだと考える。 意義:本研究を通して、自家組織化小口径人工血管の開発にまた一歩近づけた、自動化装置の開発を成功、脱細胞法の最適化を完了、材料自身の生体親和性を確認、いくつかの内膜抗凝固処理を試した。最後の壁は内膜抗凝固処理の最適化と確信し、さらに実験が必要だと考える。
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