リンパ浮腫はリンパ節郭清を伴う悪性腫瘍術後などに発症し、徐々に進行し、著しくADLを低下させる疾患である。近年、リンパ浮腫の診断にインドシアニングリーンを用いた蛍光リンパ管造影法(以下ICGリンパ管造影検査)が汎用されるようになった。この検査法は非常に鋭敏で侵襲の少ない検査法ではあるが、検査方法が統一されていない。また、検査に数時間要することもあるが、運動負荷を加えることにより、検査時間が短縮できることが知られている。 そこで、本研究では、必要最低限の時間・運動負荷で確実に評価できる検査手順を作成するために、研究期間中に計100名に対しICGリンパ管造影検査を行い、このうち検討できる結果が得られた144肢に対し解析を行った。披検肢の内わけは下肢126肢、上肢18肢、病期別内わけは0期33肢、Ⅰ期37肢、Ⅱa期47肢、Ⅱb期15肢、その他の浮腫12肢であった。解析結果は以下のとおりであった。①鼡径部または腋窩部にICGが到達する時間は、運動負荷20分で86%、25分で89%、30分で92%であった。運動30分後にも鼡径部または腋窩部に到達しなかったのは0期、Ⅱa期、Ⅱb期の9肢であった。②リンパ浮腫に特徴的な皮下への漏れ(Dermal Backflow:以下DB)の出現率は0期では0%、Ⅰ期では50%であった。Ⅱa期、Ⅱb期ではDB100%であった。③DBの出現時間に関しては運動15分後に出現率はほぼプラトーに達することがわかった。これらの結果を解析し、検査プロトコールは注射直後と運動負荷15分後の観察を行うことと決定した。 H29年には下肢に関しての結果をまとめて国際リンパ学会で発表を行った。また、論文投稿を行い、審査待ちの状況である。
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