扁平母斑は、日本では10%と高頻度にみられる先天性の皮膚色素異常で、治療への需要が非常に高いものの、効果的な治療法がないのが現状である。今までは研究対象としての注目度が低く、その病態はほとんど解明されていない。扁平母斑皮膚の組織像では表皮メラノサイトの機能異常と考えられるため、扁平母斑メラノサイトの遺伝子発現や細胞内シグナル解析などのIn vitroでの分子生物学的解析が必要と考えた。 まずは確立されていないメラノサイトの初代培養に取り組んだ。切除皮膚を酵素処理(ディスパーゼとトリプシン使用)し、表皮から真皮を分離除去後、細胞懸濁液をメラノサイト増殖培地(M254mediumとhuman melanocyte growth supplement)で培養した。細胞数が少ない状態での初代培養では、わずかにコンタミネーションしたフィブロブラストの増殖によりメラノサイトが駆逐される現象が続いたが、細胞を高密度に播種することで、メラノサイトの増殖が得られた。チロシナーゼアッセイで陽性であることを確認した。 続いて扁平母斑皮膚組織からの細胞回収を試みたが、採取できた組織量が少なく、メラノサイトの初代株を得るために難渋している。当科の扁平母斑の切除症例が減少していることからも、細胞を十分量採取することが困難であり、信頼性の高い解析結果が現状では得られていない。少ない細胞数からのメラノサイト培養法を確立するために、正常皮膚組織からのメラノサイトを用いて検討している。
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