研究実績の概要 |
研究成果は、μCT解析ではASCs/PRP群のラット頭蓋骨の骨再生体積率は移植4, 8週後で他群と比較し有意に高値を示し、HE染色では既存骨と連続し明確な骨小腔構造を伴った骨梁様組織の再生が確認された。免疫組織学的観察では、再生硬組織はOsteocalcin, Osteopontin, Alcian blue染色に陽性を示し海面骨様組織の再生が示唆された。またヌードラットを用いた移植ASCsの動向実験では、再生硬組織中に抗マウス-Osteocalcinと抗ラット-Osteocalcin双方の陽性所見が得られた。ELISA解析では、ASCs 培養上清中にVEGF, TGF-β1, HGF, IGFの4つの成長因子の放出が豊富に確認できた。さらに5%PRP添加の培養液の方が10%FBS添加の培養液と比較して、その4つの成長因子放出量は有意に高値を示した。 今回の研究結果より、ASCsとPRPの硬組織再生における相互作用、とりわけ成長因子の分泌に関してかなり明らかにすることが出来た。すなわちin vitroにおいて、PRPの添加によってASCsより分泌される各種成長因子が増加する結果、PRPはASCsの効果をサポートし硬組織再生に有利に働くことが示唆された。そしてそれを裏付けるようにin vivoにおいてもASCsとPRPとの混合物移植により放出された成長因子がパラクリン効果により既存骨からの再生を促進させ、皮質骨および海面骨様構造を伴う迅速な硬組織再生が確認された。さらには、移植したASCsも直接的に骨芽細胞へ分化したことが示唆され、ASCsの直接的および間接的な効果によって硬組織再生がもたらされたことを証明したと考えられる。 ASCs/PRP混合物は剤形がゲル状であるため、外傷や腫瘍切除後などの頭蓋顎顔面領域における小範囲の骨欠損症例では特に有用であると思われる。今後更なる硬組織再生メカニズムの機序解明や大型動物を用いた前臨床研究を通じて一層の確証を積み上げる必要はあるが、将来の頭蓋顎顔面領域における硬組織再生治療の新たな手法の一つになり得るものと思われた。
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