健常人(60歳以下の8名)を対象に、スキンコンダクタンスモニター(SCM)を装着し、下記に示す各種刺激を行いコンダクタンスの変化量を測定した(この実験は臨床試験審査委員会で承認済みである:群馬大学臨床試験部 管理番号1031)。 A)熱刺激:設定温度は39、46、47、48℃とし、各刺激の間は10分とした。B)冷刺激:アイスパックを被験者の前腕内側に当てて測定した。C)機械刺激:一定の圧(250kPa:先端のサイズ1cm2)で指のみずかき部分に機械的刺激を与えて測定した。D)画像刺激:被験者に痛そうな画像を見せ、それが実際に自分におきたものとして想像してもらい測定した。E)音刺激: 85dBのノイズ音をヘッドホンで聞かせて測定した。 各種刺激時にバイタルサインデータの取得を行った。心電図モニター(日本光電社製 ベッドサイドモニター life Scope B BSM-7105)を装着して、心拍数、Heart rate valiabilityの変化を解析。さらに、パルスオキシメーター(OLV-3100)を装着し、動脈血中酸素飽和度の振幅変化も計測した。 結果は、機械刺激で最も変化量が大きく、熱刺激では温度が上がるとともに変化量も増加した。冷刺激、音刺激、画像刺激では変化量は認められなかった。これらの結果から、SCMは刺激による交感神経の変化の中でも特に疼痛に近い刺激による変化によく相関し、客観的鎮痛評価ツールとしての可能性が高いと示唆された。 最終年度に当初予定通り食道癌術後集中治療室入室患者において覚醒時に測定したところ、変化量が患者間で大きく異なることが分かった。鎮静薬の血中濃度や気管内刺激に対する個人差が大きく、予想に反して一定の傾向を示すことが困難であることが判明した。
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