本研究の目的は、最近DAMPs としての可能性を持つことが判明したF アクチンが、クラッシュ症候群においてどのように炎症惹起や多臓器障害進展に関連しているかを追求することにある。この機序が明らかとなれば、F アクチンを標的としたクラッシュ症候群に対する新たな治療の道が拓ける。研究の焦点は、以下の3つである。(1)クラッシュ症候群モデルにおけるDAMPs(F アクチン)の評価:既に我々が確立した、ラットクラッシュ症候群モデルを用いて、クラッシュ損傷後の血中F アクチンの動態を経時的、定量的に測定する。(2)DAMPs (F アクチン)の制御:クラッシュ症候群モデルに対して、抗F アクチン抗体と抗DNGR1受容体抗体を投与し、DAMPs(F アクチン)のリガンドとしての機能を制御することで、抗炎症効果、臓器損傷抑制効果、生存率改善効果が得られるかを評価する。(3)実際の筋細胞障害を伴う疾患(クラッシュ症候群を含む)におけるDAMPs(F アクチン)の評価:血中F アクチンを経時的に測定し、その重症度と予後との関係を調査することで、筋細胞障害を伴う疾患患者(クラッシュ症候群を含む)における重症度判定、予後予測などにおける有効性を評価する。 現在、(3)まで評価が終了し、最終解析の段階である。
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