研究課題/領域番号 |
26861534
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
奥原 祥貴 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (20648232)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サイトカイン / IL18 / カルシウムハンドリング / SERCA2a / Phospholamban / PP2A / 敗血症性心筋症 |
研究実績の概要 |
敗血症性ショックにおいてはしばしば心筋障害が観察され、心機能障害が敗血症における予後の規定因子の一つとして知られている。その機序として、炎症性サイトカインと心筋細胞カルシウムハンドリング障害が重要な役割を果たす。敗血症による心筋障害が生じる時相に一致したサイトカインであるインターロイキン18 (IL 18) とカルシウムハンドリング障害の関連については不明であった。今回、敗血症により心筋障害の病態形成における、IL 18とカルシウムハンドリングとの関連について検討した。 野生型マウスの心筋を用いたIn vivoの実験において、LPSの投与後6時間で明らかな心収縮能低下を認め、血清IL18はその時相に一致して増加していた。心筋小胞体Ca2+-ATPase(SERCA2a)のmRNA、タンパク発現はLPS投与により低下しており、serca2aの抑制タンパクであるPhospholamban(PLB)のリン酸化もLPS投与により低下していた。そこでIL18との関連を調べる為にIL18欠損マウスを用い同様の検討を行ったところ、IL18欠損マウスではLPS投与後の心収縮能低下が抑制されており、serca2aのmRNA、タンパク発現の低下、PLBのリン酸化の低下は抑制されていた。PLBのリン酸化の調節因子として脱リン酸化酵素であるPP2A活性が重要な役割を果たすことが分かっている。そこで心筋のPP2A活性を測定したところ、野生型のマウスではLPS投与によりPP2A活性が増加するのに対して、IL18欠損マウスではその増加を認めなかった。 これらの結果はIL18がPP2Aの活性を増加させ、カルシウムハンドリングの抑制をもたらすことを示唆しており、IL18の抑制が敗血症における心筋障害の病態改善に寄与するものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL18欠損マウスにおける検討が概ね仮説通りであった。 しかし、高用量LPS投与後6時間ではコンダクタンスカテーテルでの検討はマウスにとって大きな負担となり、結果が安定していない。
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今後の研究の推進方策 |
今後はカルシウムハンドリングに関与する因子を網羅的に調べる予定である。 また、コンダクタンスカテーテルでの結果が安定しないことから、LPS量の再検討、カルシウムトランジェントの測定などを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度ということがあり、研究成果が学会発表の水準にまでは達しなかった部分があり、学会などへの出張を行わなかったため、旅費が発生しなかったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの金額の使用計画としては、国際学会を含めた学会への参加のための旅費に使用することで翌年度に完了する見込みである。
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