舌下免疫療法は、抗原(アレルゲン)を舌下粘膜から吸収させ、全身に免疫寛容を誘導し症状の改善を図る減感作療法であり、花粉症などのアレルギー疾患治療に有効である。一般に、花粉などの抗原に対する免疫寛容の成立には制御性T細胞(Treg)の誘導が重要である。舌下免疫療法においてもTregの関与が示唆されていたが、どのような抗原提示細胞がTreg誘導を担っているかなどの詳細は不明であった。本研究では、これまで十分に特徴づけられていなかった口腔粘膜抗原提示細胞の詳細な解析を行うことにより、舌下免疫療法におけるTreg誘導メカニズム解明を試みた。 まず、フローサイトメトリーによりマウス口腔粘膜抗原細胞の表面マーカーを詳細に解析し、粘膜上皮内に存在するランゲルハンス細胞と、粘膜固有層に存在する古典的樹状細胞とマクロファージをそれぞれ同定した。形質細胞様樹状細胞は定常状態の口腔粘膜にはごくわずかであった。さらに、この分類の妥当性を増殖因子依存性や遺伝子発現解析により確認した。 次に、マウス舌下に蛍光色素標識タンパク抗原を投与し、抗原取り込み細胞をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、舌下抗原はまず粘膜固有層のマクロファージによって取り込まれ(1~8時間後)、その後、古典的樹状細胞によって口腔粘膜の所属リンパ節である顎下リンパ節へと運搬された(8~16時間後)。さらに、舌下抗原を顎下リンパ節へと運搬した古典的樹状細胞を単離し、ナイーブCD4+T細胞と共培養したところ、効率的にFoxp3+Tregが誘導された。 以上の結果から、舌下免疫療法において、口腔粘膜のマクロファージが舌下投与された抗原を取り込み、それを古典的樹状細胞に受け渡し、古典的樹状細胞が抗原を顎下リンパ節へと運搬し、そこで抗原特異的Tregを分化誘導するという経路が示唆された。
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