研究課題
口腔扁平上皮癌における癌関連線維芽細胞(CAF)が血管新生に果たす役割をNOTCHシグナルに焦点を置いて検討した所、以下の結果を得た。ヒト舌扁平上皮癌の手術検体のうち、初発例でかつ予後が追えている93症例を用いて免疫組織化学的に検討した結果、31症例でNOTCH3陽性を示すCAFの出現が認められた。また、NOTCH3(+)CAF症例は、他のCAF(-)症例およびNOTCH3(-)CAF症例と比較して生存率が低い事も示された。更にCAFにおけるNOTCH3発現と臨床病理学的因子との関連を検討した結果、CAFにおけるNOTCH3発現の有無は、癌の大きさ(T因子)およびリンパ節転移(N因子)との間に有意な相関を示す事が分かった。次にin vitroでの解析を行った所、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(特にHO1-N-1細胞株)はcell-to-cell contactを介して、ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)のNOTCH3発現を有意に上昇させる事が示された。ヒト舌癌検体を用いて蛍光二重染色法で癌浸潤部の間質の血管密度を解析した結果、NOTCH3(+)CAF症例はNOTCH3(-)CAF症例に比して、血管密度が有意に上昇していた。この妥当性を評価するために、あらかじめNotch3siRNAをtransfectionしたNHDFに、ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)およびHO1-N-1細胞株を共培養したangiogenesis assayを確立した所、HUVECによるtube formationはNHDFにおけるNOTCH3の発現に依存して促進される事が示された。以上の結果から、口腔癌細胞はcell-to-cell contactを介してCAFのNOTCH3発現を誘導し、これらCAFがNOTCH3依存性に血管新生を促進させ、結果的に腫瘍のgrowthに寄与していると考えられた。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
PLoS ONE
巻: 11 ページ: -
10.1371/journal.pone.0154112. eCollection 2016