研究課題/領域番号 |
26861554
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | GLP-1 / オステオカルシン / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)小腸におけるインクレチン応答機構の理解と(2)インクレチン応答を活用した生活習慣病予防基盤の提唱を目標に掲げ、遂行中である。 今年度は、(1)については、主に組織学的解析で、野生型およびGLP-1R欠損マウスを用いた実験で、GLP-1R の発現の有無によって、小腸粘膜の状態に影響を及ぼすか、他のインクレチンシグナルによる代償機構も考慮に入れて解析を行った。また、(2)については、GLP-1R 応答感受性に焦点を当てて妊娠期の母体の栄養状態や児の将来の耐糖能異常症発症リスクについて解析を進めた。 今回大きく進捗が得られたのは、特に(2)についてであった。現在の生活習慣病における予防医学の主眼は専ら生活習慣の改善であるが、本課題によって、現在考えられている生活習慣病発症のメタボリックドミノよりさらに上流に、胎児期の生活習慣病素因形成があることが実証されたことから、次世代への健康障害の伝播を阻止する予防医学基盤の確立が見込める。さらに、本研究では、(GLP-1は生体内半減期が短いこと、また、妊婦への安全性が確保されていないこと等の理由から)GLP-1R応答を誘導する骨基質蛋白質であるオステオカルシンを活用した解析を行ったが、本蛋白の妊娠マウスへの為害性は確認されなかったことから、本課題の結果は、出産後2型糖尿病発症に移行しやすい妊娠性糖尿病の予防対策という側面からも魅力的な知見を提示することが予想される。 研究結果は、(1)(2)それぞれについて、平成26年度に開催された国内の関連学会(第13回西日本骨関節関連疾患懇話会、第88回日本薬理学会年会)において成果発表を行っており、専門分野の研究者からの評価を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(年度途中の)平成26年10月1日より、九州大学から福岡大学への異動があり、実験の遂行を一時止めざるを得ない状況になった。そのため、計画していた状況より若干の遅れが生じているが、平成27年度に当初の計画通りに取り戻せる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度に得られた結果をもとに、平成27年度はさらに、糖脂質負荷を行った妊娠マウスモデルにおいて、特に周産期における血糖制御に小腸を含めた全身での GLP-1R 応答がどの段階で如何なる寄与をしているのか、経時的な糖関連血清学的検査、膵ラ氏島の組織学的解析から明らかにする。 母体の過度の高血糖状態や低栄養状態は、児の成育後の生活習慣病発症のリスクを高めることが示唆されていることから、この実験では、母体のみならず、児の追跡実験も行い、膵臓の発生段階からの形態・機能比較や、出生時(臍帯血)から成獣(静脈中)に至るまでの血糖値/インスリン比を指標とした経時的血清学的検査、膵ラ氏島の組織学的解析を行う。また、組織学的解析では、発生原基を膵β細胞と共通とする小腸の発生についても観察を行う。 また、平成27年度内に国内外の専門誌へ成果発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年10月1日付けにて九州大学から福岡大学への異動があった。 そのため、動物実験の計画等、異動先の大学において新たに承認をうけるべき事項があり、1ヶ月程度の実験の滞りが生じた。このことにより、198,989円を次年度へ繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記に記した実験の滞りについては平成27年4月現在では解消されつつある。そのため、昨年度使用予定であった試薬や消耗品を平成27年度に購入することで実験は順調に進めることが可能であり、当初の実験計画に沿った研究内容の遂行を行う。
|