研究課題
最終年度は、主にインクレチン応答を活用した生活習慣病予防の提唱を目指し、妊娠期の栄養状態が母児の GLP-1R応答感受性や胎児の生活習慣病素因形成に与える影響について明らかにした。特にGLP-1応答の惹起には、前年度にその安全性が確立された非(低)カルボキシル化オステオカルシン(GluOC)を用いることで動物実験を行った。まず、妊娠中に高脂肪高ショ糖食 (HFD; 脂肪含量 30%[v/v]、ショ糖含量 20%[v/v])を摂取 した母親の産仔は、通常食(ND)を摂取していた母親から生まれた産仔より体重が有意 に重く、また、膵発生やβ細胞増殖に寄与する Pdx-1 (pancreatic- duodenal homeobox factor-1)の膵臓での発現が増強していた。これらの傾向は、仔が成獣となった後も引き続き観察され、離乳後にこれらの仔の栄養状態(HFD/ND)を区別して追跡した場合にも、母親の妊娠期の栄養状態が大きく反映されていた。さらに、上記の妊娠母体過栄養による(仔に対する)影響は、妊娠母体が GluOC を 摂取することで回避され、この傾向がGLP-1 受容体欠損マウスを用いた同様の実験では 観察されなかったことから、GluOC が GLP-1 応答を介して妊娠母体の糖脂質代謝を正 常化し、世代を越えた糖脂質代謝異常をも回避させる可能性が示された。現在の生活習慣病における予防医学の主眼は専ら生活習慣の改善であるが、本課題によって、 現在考えられている生活習慣病発症のメタボリックドミノよりさらに上流に、胎児期の生活習慣病素因形成があることが実証されれば、次世代への健康障害の伝播を阻止する予防医学基盤の確立が期待できる。
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