研究課題/領域番号 |
26861559
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
佐藤 正樹 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (80598855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 象牙芽細胞 / 酸感受性イオンチャネル / 酸感受性代謝調節型受容体 / amiloride |
研究実績の概要 |
象牙芽細胞はtransient receptor potential (TRP) channelsで刺激 (pH・温度・機械など) を受容し、細胞内Ca2+濃度の一過性増加を示す。一方、近年TRP channels以外のpH・機械刺激感受性膜タンパク質の存在も示唆されている。そこで、本細胞における酸・機械刺激誘発性Ca2+流入の詳細を検討した。実験にはマウス由来培養象牙芽細胞 (odontoblast lineage cells, OLC) を用いた。細胞内Ca2+濃度の変化は、fura-2によって評価した。標準細胞外液 (pH 7.4) に0.1 M HClを加え、pH 7.0 - 4.0の酸刺激溶液を作成した。機械刺激は標準細胞外液 (333 mOsm/L) から100 mM NaCl を除き (133 mOsm/L)、マンニトールで等浸透圧性・低浸透圧性刺激溶液 (200 mOsm/L) をそれぞれ作成した。酸刺激を与えると、象牙芽細胞内のCa2+濃度は、pH依存性に一過性に増加した。酸刺激誘発性 (pH 5.5) Ca2+流入は、 amiloride (5 μM) によって抑制された。低浸透圧刺激による一過性細胞内Ca2+濃度の増加も、同様にamilorideによって抑制された。これらの結果から、amiloride感受性Ca2+透過性イオンチャネルが酸・機械刺激の受容に関わることが示された。Amilorideは酸感受性イオンチャネル (acid sensing ion channel, ASICs)および上皮性Na+チャネル (epithelial Na+ channel, ENaC) 等の非選択的陽イオンチャネルブロッカーであることから、酸・機械刺激による細胞内Ca2+濃度の増加は、これらに由来する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画当初は、象牙芽細胞に発現する酸感受性イオンチャネルはTRP channelsとAcid sensing ion channels (ASICs) だと考えられていたが、細胞外カルシウムを除去した環境でも、酸刺激に対して細胞内カルシウムの増加がみられた。この結果から、象牙芽細胞には細胞外カルシウムに依存しない酸受容機構の存在が示唆された。さらに代謝調節機構における細胞内シグナル伝達系においてもryanodine受容体からのカルシウムイオン放出系に新たな経路の存在が示唆された。これらは全く新規の発見であり、当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
RT-PCRから得られた知見から、ASCIsサブタイプの発現系に特徴があることが分かった。また昨年末から、ASCIsの選択的antagonistが数種類販売されるようになった。当初予定していたsiRNAによる特定タンパク質の発現抑制を試みる必要性が少なくなったため、wild typeの象牙芽細胞における生理的、病理的酸感受性についてさらなる検索を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は想定以上に達成できたが、進行状況が想像よりも早かったため次年度分の研究の一部を前倒し実施した。そのため新規研究を実施するには物品購入額がやや不足する状況になったため、次年度使用額が生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度は、予定していた実験を実施する。
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