研究課題
硬組織欠損で象牙質が露出すると、象牙細管内液を介して象牙芽細胞に侵害刺激が加わる。一方で、齲蝕病原菌は象牙細管に侵入・定着し、酸を産生する。象牙芽細胞は我々が既に報告している酸感受性transient receptor potential (TRP) チャネルの他に、acid sensing ion channels (ASICs) の発現が示唆されている。本研究は象牙芽細胞の酸受容と細胞応答の関係に着目し、象牙芽細胞における酸受容機構と細胞内Ca2+シグナリングを検討した。実験には培養象牙芽細胞を用いた。酸刺激 (pH7-4) 溶液は標準細胞外液にHClを加えることで調整した。細胞応答は細胞内遊離カルシウム濃度 ([Ca2+]i) をCa2+蛍光色素を用いて記録した。細胞外Ca2+存在下で、酸刺激 (pH7-4) は [Ca2+]iをpH依存性に増加させた (EpH50 = 5.5)。細胞外Ca2+を除去すると、 pH5-4刺激での[Ca2+]i増加が増強した。細胞外Ca2+非存在下でsarcoplasmic reticulum Ca2+-ATPase阻害剤 (cyclopiazonic acid) と ryanodine 受容体 (RyR) 阻害剤 (dantrolene) を投与すると酸刺激で誘発される[Ca2+]iの増加は抑制された。Phospholipase C阻害剤 (U73122) は酸刺激誘発性[Ca2+]i増加を抑制したが、adenylate cyclase阻害剤 (SQ22536) は抑制しなかった。ASICsの非選択的阻害剤であるamilorideは細胞外Ca2+の有無に関わらず、酸刺激誘発性[Ca2+]i増加を抑制した。一方、TRPV1チャネルの選択的アゴニスト (resiniferatoxin) 誘発性[Ca2+]i増加は、amiloride非感受性であった。細胞外酸刺激は、TRPV1チャネルを介して[Ca2+]i増加を誘導する。加えて酸刺激はGタンパク共役型酸感受性受容体を活性化し、phospholipase Cを介したRyRからのCa2+放出を誘導する。酸刺激によって誘導される[Ca2+]i増加は細胞外Ca2+濃度依存的であり、象牙質脱灰による病理学的反応性象牙質形成を調整している可能性が示唆された。
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