癌と幹細胞の類似性に着目しES、iPS細胞の増殖を抑制し分化誘導に働くタンパク質Leftyが癌細胞では癌抑制因子として働き、その発現がLefty遺伝子のメチル化などのエピジェネティック因子により調節されることを明らかにしている。本研究は、前癌病変である口腔内白板症細胞およびこの細胞をリプログラムした細胞におけるLeftyの発現とエピジェネティック因子の関連を明らかにすることが目的である。 白板症からのiPS細胞樹立の目的は前癌病変からのiPS細胞の作製であるので、前癌病変であり、かつ遺伝性疾患である基底細胞母斑症候群(Gorlin症候群)に着目し、まずこのiPS細胞を作製することとした。 前年度までに、Gorlin症候群患者4症例からそれぞれiPS細胞を作製し、未分化性および多能性を示すことを確認した。これらのGorlin-iPS細胞をSCIDマウスへ移植、9~12週目に回収したテラトーマにおいては癌の形成は認められなかった。我々が以前報告したiPS細胞から効率よく骨芽細胞へ分化誘導する方法(PLos One 2014 9 (6):e99534 2014)を用いて、Gorlin-iPS細胞および正常ヒトiPS細胞を分化誘導後、PCR arrayを用いて、Hh関連遺伝子の発現を比較検討した。その結果、Gorlin-iPS細胞においてHh経路、Wnt経路、およびBMP、Runx2の発現上昇が認められた。 今後は、白板症症例の確保およびiPS細胞の作製、Gorlin患者の癌病変部位からのiPS細胞の作製を行い癌化との関連について詳細に検討していく。
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