炎症性疼痛に対する三叉神経節内GABA受容体のシグナル伝達系における役割を解明するため、研究期間全体の成果を踏まえ、さらなる追加実験・検証を行ない、最終年度は正常群と比較し顎関節・咬筋等の深部組織炎症惹起モデルにおいて、この部位を支配し三叉神経脊髄路核尾側亜核に投射する小型~中型三叉神経節ニューロンのGABA産生と受容体発現の変化を、GABA合成の具体的指標として注目されているGAD65・GAD67に着目して逆行性二重蛍光標識法および免疫組織化学的手法を用いて確認した。 加えてIn vivo状況下の実験においても、マルチバレル電極によるイオントフォレシス微小電気泳動法を用いた細胞外記録により、末梢受容野に加えた侵害刺激に応じる三叉神経節ニューロンの活動性にGABA B受容体作動薬・拮抗薬の投与が変調効果をもたらす事も確認できた。これらの結果から、シナプスが存在しないはずの三叉神経節におけるGAD産生とGABA受容体の存在が慢性炎症惹起時の侵害受容伝達の変調に大きく関わり、顎口腔顔面領域の痛覚過敏や関連痛の発現に関係している可能性が示唆された。 本研究の結果は、近年注目されている非歯原性歯痛の発生メカニズムの解明に役立ち、治療法確立の一助となり得るものである。 当初の計画通り、本研究成果は国際学会IADR 2016(平成28年6月22日~6月25日)において学会発表を行なった。また、共同演者として国際学会IADR 2017(平成29年3月20日~3月25日)および第94回 日本生理学会(平成29年3月28日~3月30日)において関連分野の学会発表や研究調査等を行なった。 今後の研究の展開として、本研究の追加結果を国際学会IADR 2018、第95回 日本生理学会および歯科基礎医学会等に発表予定である。また、共同著者として本研究の一部および関連内容を国際誌に投稿準備中である。
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