研究課題
本研究では、H3K9ヒストンメチル化酵素であるG9aとESETによる骨芽細胞分化制御の仕組みの一端を明らかにすることを目指している。平成26年度は、293細胞と10T1/2細胞にてRunx2 promoter-LucやOsteocalcin promoter-Lucを用いたレポーターアッセイによって、G9aとESETがRunx2の転写活性化能を増強する可能性を明らかにした。平成27年度は、G9aがRunx2の転写活性化に寄与しているメカニズムを調べるため、G9a flox/floxマウス頭蓋冠由来初代培養骨芽細胞とCre発現アデノウイルスを用いてG9aノックアウト細胞を作出し、まず内在性のRunx2およびOsteocalcinのmRNAレベル、タンパク質レベルの変動を調べた。コントロール細胞に比べG9aノックアウト細胞では、Osteocalcinの発現が減少し、Runx2の発現は変化が認められなかった。ESETについてはflox/floxマウスの作出に時間を要したため、G9aとRunx2について機能解析を先行して進めている。G9aとRunx2が複合体を形成する可能性を調べるため、Flag:G9aとHA:Runx2を293細胞へco-transfectionし、細胞質タンパク質と核内タンパク質を分画調整したところ、transfectionしたHA:Runx2は速やかに核内へ移行するが、Flag:G9aは細胞質と核内の両画分にも存在する事が分かった。そこで、核内タンパク質画分を用いて抗Flag抗体による免疫沈降実験を行なったところ、Flag:G9aとHA:Runx2の結合が認められた。これまでの報告によると、G9aには他の転写制御因子との結合に必要なドメインが複数存在する事が明らかになりつつある。現在、Runx2とG9aの結合に必要な機能ドメイン、さらに転写活性化の増強に必要な機能ドメイン、それぞれを同定するために、複数のG9a部分欠損プラスミドの準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
Runx2の転写活性化能を増強するG9aはRunx2と複合体を形成している事が明らかにできた。また、頭蓋冠由来初代培養骨芽細胞でG9aノックアウトしたところ、内在性Runx2の発現に変化がなかったが、その制御下にある内在性Osteocalcinの発現に抑制が認められた事から、in vivoでもG9aがRunx2による転写活性化に寄与する可能性が示唆された。
G9aとRunx2が協調的に転写活性化に寄与するものと考え、さらに詳細な解析を進める。293細胞へのco-transfectionでも認められたG9a:Runx2複合体の形成が、内在性にも認められるか調べるために、マウス頭蓋冠由来初代培養骨芽細胞とマウス頭蓋冠組織から核内タンパク質画分を調整し抗Runx2抗体による免疫沈降実験をおこなう。この際、複合体にESETが含まれるかも同時に調べる。また、ゲノム上へのRunx2結合の網羅的解析に関する論文を参照し、所属研究室の骨芽細胞分化過程で発現する遺伝子の変動パターンと比較することでRunx2の直接のターゲットとなる候補遺伝子を絞り込み、G9aノックアウト細胞にてそれら候補遺伝子の発現変動を調べる。また、クロマチン免疫沈降法を用いてそれらの遺伝子制御領域にRunx2と同時にG9a、ESETが局在するかを調べることで、G9a、ESETとRunx2がin vivoでも協調的に転写制御には働く可能性を調べる。当初、Osx-Creマウスを用いて骨芽細胞特異的にG9aとESETのdouble KOマウスの作成を目指していたが、未だESETについては十分にその役割を明らかに出来ていないため、骨芽細胞、頭蓋冠組織を用いた詳細な解析に焦点を絞って研究を進める。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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