研究課題/領域番号 |
26861563
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
安尾 敏明 朝日大学, 歯学部, 助教 (30608469)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 味覚 / 微量栄養素 / 欠乏 / ビタミンC / 末梢味覚器 / 味蕾 / 味細胞 / 受容体 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、微量栄養素欠乏が末梢味覚器における味覚の受容・情報伝達機構に影響を及ぼす可能性があるのかどうかを明らかにした上で、微量栄養素の選択摂取調節機構を解明することを目的とし、これまでに微量栄養素であるビタミンC(以下、VC)が充足している正常ラット及び欠乏しているVC欠乏ラットを用いて解析を行ってきた。その結果、VC欠乏ラットの鼓索神経では、正常ラットと比べ、VCや塩酸のみならず、クエン酸、酢酸及び酒石酸に対する応答が減少していること、高濃度の NaClの応答において、アミロライド感受性受容機構応答成分が減少していることを明らかとし、VC欠乏は酸味及び一部の塩味の末梢味覚器の経路に影響を与える可能性を示してきた。 本年度では、VC欠乏状態に陥ると、味蕾数に変化がおきるのかどうか明らかにするために、VC欠乏ラットと正常ラットの味蕾数をカウントし、単位面積当たりの味蕾数を算出することで、両ラットを比較し、検討した。その結果、舌前3分の2の舌上皮に存在する茸状乳頭味蕾では、現在のところ有意差は認められていないが、今後さらに解析を続けたい。 このように、VC欠乏状態になっても、味蕾数には変化がないことが予測されるが、味細胞数や味細胞に発現する酸味受容体及び塩味受容体の発現量に変化が生じている可能性はまだ存在する。この点を明らかにするため、現在、VC欠乏及び正常ラットの茸状乳頭及び有郭乳頭の味蕾(味細胞)を回収し、mRNAを抽出後、cDNAを精製し、その数を増やしている。今後、両ラットにおける各種味覚関連分子の発現量をTaq Manプローブを用いたreal time PCR法を用いて、比較解析することで、微量栄養素の欠乏が味細胞の味覚受容機構に影響を与えるのかどうかを検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、ビタミンC欠乏時にある特定の末梢味覚器において変化がおきている可能性を示すことができた。また、本年度の研究により、ビタミンC欠乏により、茸状乳頭における味蕾数に変化がない可能性を示せたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究結果から、ビタミンC欠乏では、酸味受容細胞と考えられているⅢ型細胞や塩味受容細胞において何らかの変化がある可能性が高いことが推察される。Ⅲ型細胞には酸味受容体候補であるPKD2L1等が発現し、機能していることが報告されている。また、塩味応答のうち、アミロライド感受性応答成分が減少していることが明らかとなったが、アミロライド感受性の塩味受容を担う受容体として、ENaCが機能していることが報告されている。以上のことから、まずは、ビタミンC欠乏ラット及び正常ラットの茸状乳頭及び有郭乳頭の味蕾を回収し、real time PCRにてPKD2L1やENaCなどを含む各種味覚関連分子の発現量を比較解析したい。また、ビタミンC欠乏時にどの部分の味蕾に、またはどのタイプの味細胞に変化があるのか明らかにするために、同様の方法を用いて、各タイプ(Ⅰ型~Ⅲ型)の味細胞のマーカー分子の発現量や単一味蕾や単一味細胞における味覚関連分子の発現量の比較解析を行いたい。 さらに、行動学的手法を用いて、VC欠乏前後でのVC以外の酸に対する嗜好性を計測し、比較解析することで、VC欠乏時に、VCだけでなく他の酸に対する嗜好性も上昇するのかどうかを明らかにし、VC欠乏時のVCに対する嗜好率上昇の原因が、酸味の受容機構の変化によるものなのか、それともVC特異的な受容機構の変化によるものなのかを今後明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたキットでは、有郭乳頭の味蕾(味細胞)のmRNA抽出には不向きであったため、別のキットを新たに購入したため。
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次年度使用額の使用計画 |
Taq Manプローブを用いたreal time PCRに用いる各種薬品や各種味覚関連分子のプライマーの作成等に使用するものとする。
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