研究課題/領域番号 |
26861567
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 美弥子 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10631864)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 活性酸素種 / 血管内皮細胞 / 低酸素環境 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに通常酸素分圧下で、腫瘍組織から腫瘍血管内皮細胞の分離、培養を行い、その異常性を確認してきた。さらに、低酸素環境が正常血管内皮細胞に対して、染色体の異常性の獲得を誘発する可能性を見いだしている。その機序において、活性酸素種(ROS)が重要な役割を果たしている可能性も示唆してきた。以上を踏まえ、低酸素条件における正常血管内皮細胞の挙動について検討を行った。 1)低酸素培養条件においての細胞の表現型の解析。血管内皮細胞の増殖能:正常酸素状態、低酸素状態それぞれの条件において血管内皮細胞を培養し、細胞数を測定して増殖能を比較した。その結果、増殖に有意差のない期間を見出した。未分化能の維持、幹細胞性の獲得の有無について、関連分子の遺伝子発現を解析して検討した。染色体異常性の獲得の有無について、FISHを行い解析した。その結果、低酸素条件での培養は血管内皮細胞に染色体異常をもたらす可能性を示唆した。 2)表現型の変化に伴う遺伝子発現の変化の解析による腫瘍血管内皮マーカー候補分子の探索。低酸素培養条件による正常血管内皮細胞の遺伝子発現変化をReal time PCR 法を用いて解析した。幾つかの遺伝子では我々が腫瘍血管内皮細胞で発現が変化したものと同様の挙動を示した。 3)低酸素における活性酸素の関連の検討。低酸素培養条件において見いだされた異常性について、低酸素で産生されるROSを抑制することでその誘発を妨げることが出来るかを検討した。ROSを抑制することで特定の異常性の発現を抑制することが示唆された。また、低酸素培養条件において見いだされた異常性について、正常血管内皮細胞にROSを添加することでも誘発されるかを検討中である。現在までの実験の結果をもとに、腫瘍血管内皮細胞の異常性が、ROSを抑制することによって変化するのか、検討しながら研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究実績である、低酸素状態における血管内皮細胞の増殖能、染色体の変化についての解析に基づき、適切な研究方針を計画することができている。当該年度の研究計画について、ほぼ予定通りに解析が進んでいる。正常血管内皮細胞と低酸素環境における血管内皮細胞を比較するうえで、活性酸素種(ROS)に注目し、ROSの添加や抑制によって起こる変化をまとめることができつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、引き続き低酸素環境における血管内皮細胞の変化について検討する。また、低酸素環境と活性酸素の関連についての検討をさらに発展させ、腫瘍組織内での血管内皮の異常性獲得とROSとの因果関係をin vivoにおいて検討していく方針である。 また、遺伝子制御研究所血管生物学教室のスタッフ、並びに研究協力先である歯学研究科口腔病理学講座のスタッフ、医学研究科腫瘍外科のスタッフと継続的なミーティングを行い、実験や研究経過の検討並びに再計画を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、旅費の支出が少なかったため若干の次年度使用額が生じた。ただし、実験や研究に使用する物品の支出はほぼ予定通りであり、次年度の使用状況を考慮すると妥当と考えられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費は予定通り支出が見込まれる。また、動物を用いた実験もますます必要になる。次年度は学会報告や論文掲載などに使用する費用として使用する。
|