研究課題
口腔がん細胞(SAS cellおよびCa9-22 cell)を用いて、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を想定したホウ素薬剤を作用後に中性子照射を行ったがん細胞群とX線照射を行ったがん細胞群で、生存率曲線やアポトーシス頻度など基礎データの収集を行った。臨床では、照射直前のホウ素薬剤(BPA)の血中濃度が25ppm前後であることから、培地中にBPAが25ppmとなるように添加し中性子線を照射し生存率曲線を求めた。D10における生物学的効果比(RBE)は、約2.5から3.0であった。アポトーシス頻度に関してもBNCTを想定し中性子照射を行った細胞群では、効率的にアポトーシス誘導が行われていた。フローサイトメトリ―法を用いて、照射後の細胞周期の変動に関して解析を行った。等線量2Gy照射時、ホウ素薬剤+中性子照射群では、照射後12時間を超えて24時間後でもG2/M期において細胞周期の停止を認めたていたが、X線照射群では照射後12時間ではG2/M期において細胞周期の停止を認めたが、照射24時間後ではG2/M期における細胞周期の停止は解除さていた。照射後の現象の違いに関して、そのメカニズムを解明していくために、細胞の照射2時間後にタンパク質を回収しウエスタンブロット法にて発現タンパクの比較を行ったところ、ホウ素薬剤+中性子照射群ではX線照射群に比べ生存シグナル因子において重要な役割を果たすリン酸化Akt(p-Akt)の発現を抑制していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を想定したホウ素薬剤作用後に中性子照射を行ったがん細胞群とX線照射を行ったがん細胞群の生存率曲線やアポトーシス頻度など基礎データの収集を行うことが出来た。また、ウエスタンブロット法を用いてそれぞれの細胞群のタンパク質発現を比較することで、BNCTによる効率的なアポトーシス誘導メカニズムを解明する上での足がかりを得ることが出来た。また、BNCTによる抗腫瘍効果と周囲正常組織への影響を検討するために必要となる口腔ガンモデルマウスの作成を行った。
BNCTを想定したホウ素薬剤作用後に中性子照射を行ったがん細胞群とX線照射を行ったがん細胞群で、照射後のタンパク質の発現の比較検討をさらに進める。特に、生存シグナル因子と深くかかわる血管新生や細胞遊走に関連する因子に関しても解析を行う。細胞での解析の後は、移植系マウスを用いて比較検討していくことが目標である。
実験で利用する原子炉の定期検査が長引き、購入予定の試薬が次年度以降になったため。
実験に用いる細胞培養の試薬の購入を予定。
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