研究課題/領域番号 |
26861571
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
仲川 洋介 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (00714875)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / 5-FU / 化学療法 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、ホウ素製剤(BPA)をがん細胞に選択的に取り込ませた後に中性子の照射を行うことにより、がん細胞を選択的に破壊する治療法であり、ホウ素製剤をいかにがん細胞に多く取り込ませることが出来るかが重要となってくる。 これまでがん細胞を移植したヌードマウスを用いて5-FUを5日連続投与し3日後にBPAの投与を行った群と、同様に投与し10日後にBPAを投与した群、さらに5-FUの投与をせずにBPA投与を行ったコントロール群で、BPA投与後のがん組織および臓器毎の組織のホウ素集積に差が生じるか否かの検討を行い、各群とも正常組織では有意差を認めず、がん組織においては5-FUを投与し3日後にBPAの投与を行った群でホウ素の取り込みの低下を有意に認めていた。そこで、5-FUの先行投与により、なぜホウ素の取り込みが阻害されているのかを分子生物学的手法を用いて検討を行った。 口腔がん細胞を用いて、5-FUを培地中に添加し24時間処理した群と5-FUで処理を行わない群で細胞周期の比較検討を行った。5-FUで24h処理した群では、G2/M期での細胞周期の停止を認めた。さらに、5-FUを培地中に添加し5日間処理した群と5-FUで処理を行わない群で細胞周期の比較検討を行ったところ、5-FUで24h処理した群でG2/M期での細胞周期の停止を認め、さらにSubG1に著明な集積を認めることで細胞死(アポトーシス)の誘導が考えられた。さらに、細胞周期に関するタンパク発現をウエスタンブロット法で比較したところ、5-FUで処理した群では細胞周期に関わるCyclinD1の発現が低下していた。 これらより、5-FUの先行投与によってホウ素(BPA)の取り込みが阻害されている要因は、腫瘍組織の細胞周期の停止と腫瘍組織内の壊死組織の増加によるアミノ酸代謝の低下と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京都大学の研究用原子炉の運転中止が続き、当初予定していた通りの実験を行うことは不可能となっている。そのため研究のテーマに即しながら手順や内容をやや変更しながら研究を進めている。具体的には、腫瘍を移植した動物を用いて、5-FUやシスプラチンなどの抗がん剤の先行投与が、その後のホウ素製剤であるBPA投与による腫瘍や各臓器へのホウ素の集積にどのような影響を与えるかの検討を行い、非常に臨床に役に立つ結果を得ている。さらに、昨年度は抗がん剤先行投与により腫瘍へのホウ素の集積が低下するメカニズムの解明を分子生物学的手法を用いて行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、抗がん剤先行投与によってホウ素製剤であるBPA投与後の腫瘍組織におけるホウ素の集積への影響を検討し、さらにそのメカニズムを分子生物学的手法を用いて検討を行った。 今後、京都大学原子炉実験所の研究炉の運転が再開されれば、実際に中性子を照射することにより、これまでの実験で得られた結果がどれだけ腫瘍の大きさの変化に反映されるか否かを検討していきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、京都大学原子炉実験所との共同研究を行う計画を立てていた。しかしながら、研究炉の運転再開が延期されているため中性子照射実験などを行うことが出来ず次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
京都大学原子炉実験所の研究炉の運転再開が予定されており、中性子照射実験等の共同研究に関しても同研究所の研究者と計画を進めている。細胞培養に必要な物品や実験動物の購入に使用する予定である。
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