研究課題/領域番号 |
26861573
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中山 真彰 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10579105)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯周病原細菌 / 病原因子 / ジンジパイン / 細胞内シグナル伝達 / PI3K/Akt |
研究実績の概要 |
研究の目的は、Porphyromonas gingivalisの産生するシステインプロテアーゼ「ジンジパイン」の宿主細胞に対する新規作用を調べ、歯周病病態形成における役割を明らかにすることである。申請者は、ジンジパインによる宿主上皮細胞のPI3K/Akt経路のシグナル伝達抑制を見出し、これまでに知られていないジンジパインの新規作用に注目して研究を行ってきた。研究の実施計画では、ジンジパインの歯肉上皮細胞への作用機序の解析をおこない、歯周病態形成におけるジンジパインの役割を明確にすることを目指した。ジンジパインは、細胞内への菌の侵入やジンジパインの細胞内からの作用ではなく、細胞膜タンパク質の切断により、PI3Kの阻害を引き起こしていることを明らかにした。PI3Kの抑制は、PDK1の細胞膜への移行を阻害し、Aktの抑制へと繋がっており、さらにはAkt下流因子であるグルコース代謝関連タンパク質GSK3やタンパク質合成・オートファジー関連タンパク質mTOR、およびBcl-2ファミリータンパク質Badへのリン酸化活性への影響を示した。GSK3とBadは、リン酸化レベルの減少によるそれぞれのキナーゼ活性の増加を示す。mTORにおいては、リン酸化レベルの減少による活性低下を示す。以上のことから、PI3K/Aktが制御するタンパク質群の撹乱が起こっていることが示唆された。今後の課題は、それらの機能への影響を解析すること、またPI3K/Aktの活性抑制に繋がる膜タンパク質の同定であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ジンジパインによるPI3K/Aktの抑制を明らかにしたが、それらの活性抑制に繋がる膜タンパク質の同定が未解決であり、その解析方法の改善策にやや時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
ジンジパインによるPI3K/Aktの抑制を明らかにした。従って、研究の方向性として、PI3K/Aktが制御するタンパク質群の生理的機能・役割を解析すること。またPI3K/Aktの活性抑制に繋がる膜タンパク質の同定を行なうこと。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた宿主細胞内シグナル伝達の分子解析が良好であったため、計画を変更しプロテオーム解析法による歯周病原細菌産生酵素ジンジパインの標的膜タンパク質の解析を行なうこととしたが、想定以上に時間を費やし、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画として、標的膜タンパク質の同定および解析を行ない、成果発表を行なうために必要な経費として使用する予定である。
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