研究課題/領域番号 |
26861574
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
古庄 寿子 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (00634461)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | P.gingivalis / NASH / TLR2 |
研究実績の概要 |
私はこれまでP.gingivalis(P.g.)歯性感染が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態を増悪することを明らかにした。さらに、ヒト脂肪化肝細胞(HC3716-hTERT株)において、Toll-like receptor (TLR)2発現上昇により、P.g.-LPSに対する感受性が増し、炎症の増強や線維化の促進が生じる可能性を示した。今年度は,P.g.歯性感染によるNASHの病態増悪機構におけるTLR2経路の重要性を明らかにする目的で、TLR2ノックアウト(KO)マウスを用いてP.g.歯性感染実験を行った。高脂肪食(HFD)を8週投与し、NASHを誘導したマウスを2群に分け、一群にはP.g.を歯髄から歯性感染させた。普通食(CD)飼育マウスにも同様の処置を行い、TLR2 KO-CD/P.g.-、-CD/ P.g.+、-HFD/ P.g.-、-HFD/ P.g.+の計4群を作成し、感染処置6週後の肝臓における組織学的変化やマクロファージ、好中球の出現状況を免疫組織化的に調べ、野生型(WT)マウスでの結果と比較検討した。組織学的にTLR2 KO群ではWT群と比較して高脂肪食による脂肪の蓄積が顕著に減少していた。また、TLR2 KO群では、WT群と比較してすべての実験群で炎症反応が減弱する傾向を示した。特にTLR2 KO-HFD/ P.g.+群ではWT-HFD/ P.g.+群と比較して、マクロファージの集簇像、アポトーシスに陥った肝細胞周囲へのマクロファージの取り囲み(貪食)像(Crown-like structure; CLS)また好中球の浸潤数が有意に減少していた。以上の結果より、TLR2経路はP.g.歯性感染による炎症反応ばかりでなく、肝細胞への脂肪の沈着にも重要な役割を果たすと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画における研究課題について概ね順調に進んでいる。平成27年度に予定している実験についてもすでに着手している。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoの実験においてWT群と比較してTLR2 KO群では、すべての群で炎症反応が抑えられていることが組織学的に明らかになった。引き続き、実験動物の肝臓から抽出したmRNAでの炎症性サイトカインおよびインフラマソームの発現の変化を調べるとともに、タンパクレベルでのサイトカインの発現状況を比較検討することで、P.g.歯性感染が誘導する肝組織の炎症反応の増強においてTLR2経路が果たす役割について多角的に調べる。また、TLR2 KOマウスにおける、肝線維化の状況を組織計測学的に調べ、P.g.歯性感染が肝線維化へおよぼす影響について明らかにする。さらに、TLR2 KOマウスの感染歯の根尖病巣の状況や血清サイトカイン/LPSレベルの変化についてもWT群との比較検討を行うことで、P.g.供給源としての歯性感染病巣の役割についても検討する。 in vitroの実験では、脂肪化肝細胞モデルでみられたP.g.-LPSの誘導する炎症性サイトカイン発現増強におけるTLR2経路の重要性について検討する。具体的には、正常肝細胞および脂肪化肝細胞を用い、P.g.-LPS刺激後の炎症性サイトカインおよびインフラマソームmRNA発現、また、培養上清中のサイトカイン産生におけるTLR2阻害剤の影響を調べる。
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