研究課題
私はこれまでP.gingivalis(P.g.)歯性感染が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態を増悪することを明らかにし、さらに、ヒト脂肪化肝細胞(HC3716-hTERT株)において、Toll-like receptor2 (TLR2)発現上昇により、P.g.-LPSに対する感受性が増し、炎症の増強や線維化の促進が生じる可能性を示した。P.g.歯性感染によるNASHの病態増悪機構におけるTLR2経路の重要性を明らかにする目的で、昨年度は、in vivo実験において、WT群と比較してTLR2 KO群では、脂肪沈着と炎症反応が抑えられていることを組織学的に明らかにした。本年度は、実験動物の肝臓から抽出したmRNAでの炎症性サイトカインの発現の変化を調べ、TLR2KO-HFD群の肝臓では、WT-HFD肝臓と比較して、炎症性サイトカイン(IL-1β)の発現低下が観察された。肝線維化の状況を組織計測学的に調べたが、 WT群およびTLR2KO群に顕著な差は見られなかった。さらに、TLR2 KOマウスの感染歯の根尖病巣を比較したが、2群間に顕著な差は見られなかった。in vitroの実験では、正常肝細胞および脂肪化肝細胞を用い、P.g.-LPS刺激後の炎症性サイトカインおよびインフラマソームmRNA発現におけるTLR2阻害剤の影響を調べた。TLR2阻害剤はP.g.-LPSの誘導する炎症性サイトカインやインフラマソームの発現を有意に抑制した。また、同様の実験をヒトマクロファージ(THP-1株)では、脂肪化によるTLR2発現に差はなく、また脂肪化の有無に関わらず、P.g.-LPS刺激により炎症性サイトカイン発現は上昇した。TLR2阻害剤はP.g.-LPSによる炎症性サイトカイン発現上昇を抑制した。脂肪肝では、肝細胞でのTLR2発現上昇とTLR2で発現するMΦの動員が起こり、P.g.に対する感受性が高まることで、過剰な炎症反応が生じ、NASHの病態増悪につながることが明らかとなった。以上により、TLR2を標的としたNASHの新しい治療戦略の可能性が示唆された。
すべて 2015
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PLoS One.
巻: なし
10.1371/journal.pone.0137249.
10.13711/journal.pone.0139620.
Reprod Sci.
10.1177/1933719115620497