研究課題/領域番号 |
26861575
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中島 英行 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (30437032)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 温熱療法 / 分子標的薬 / 口腔癌 / 併用療法 |
研究実績の概要 |
進行口腔癌に対する治療は外科的療法が主体となるが、術後の機能・審美障害など抱える問題は多く、これらを解決するためには化学療法、放射線療法、手術を主体とした従来の方法に加え、新たな治療法の開発が必要である。現在多くの領域で注目され、研究・開発が進められているものの一つに分子標的治療がある。この分子標的治療は癌細胞に特異的に発現する分子を標的とするため、副作用を最小限に抑えることが可能となる。今回の研究では、安全性が高くかつより高い抗腫瘍効果が得られる治療法の開発を目的に、分子標的薬に温熱療法を加えることにより標的分子の発現誘導と腫瘍抑制に対する相乗効果、さらに早期の臨床応用を目指し、トランスレーショナルな研究に取り組んだ。 我々が標的分子として注目したInterleukin 13 Receptor Alpha 2 (IL-13Ra2)は、脳腫瘍、頭頸部癌、卵巣癌などに高発現することが報告されているが、ほとんどの正常組織には認められない。近年我々は口腔扁平上皮癌においても,IL-13Ra2が高発現していることを見出し報告した。そこで我々は、IL-13と殺細胞効果のある緑膿菌毒素Pseudomonas Exotoxin (PE)の2つのたんぱく質を遺伝子組み換え技術により1つにした分子標的薬であるIL13-PEを実験に用いた。 これまでの研究で、加温により口腔癌細胞株におけるIL-13Ra2の発現レベルの上昇を認めた。そこで温熱療法にIL13-PEを用いた分子標的療法を組み合わせることにより、従来から知られている温熱療法の効果だけでなく、標的分子の発現上昇を図ることでIL13-PEに対する癌細胞の感受性を高める効果が観察された。マウスを用いたin vivoでの実験において、併用療法により抗腫瘍効果が観察された。 これまでの研究から、今後の口腔癌に対して温熱療法と分子標的薬(IL13-PE)の併用療法が臨床応用に向けて期待できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究でin vitroにおいて温熱療法とIL13-PEの併用療法による、HSC-3,SCC-25の口腔扁平上皮癌細胞株を用いた細胞レベルでの抗腫瘍効果を観察した。残るin vitroの実験として、TUNEL assayを用いたアポトーシスの誘導による抗腫瘍効果のメカニズムについて研究を行い、温熱療法とIL13-PEの併用療法によって有意にアポトーシスを誘導している結果が観察された。 In vitroで抗腫瘍効果が確認できたことで、マウスの皮下腫瘍モデルを用いて併用療法を実施した。マウスの大腿に腫瘍を移植し、ウォーターバスにて加温を行い、IL13-PEを腫瘍に直接投与した。経時的に腫瘍のサイズを計測し、併用療法による腫瘍抑制効果を観察することができた。腫瘍ならびに臓器を摘出して免疫組織学的に治療効果のメカニズムや副作用については現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を、現在論文投稿を目指して執筆中である。併せて、in vivoで得られたサンプルについて、副作用の有無と、抗腫瘍効果のメカニズムについて免疫組織学的、細胞生物学的に検討を行う。 今回の研究を臨床応用に向けて考えた場合に、何が必要か、どんな工夫が必要かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験後の回収したサンプルについて解析が必要となり、その分の実験費用が次年度分として生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
動物実験で得られたサンプルの解析について、免疫染色ならびにRNA解析のための試薬代として使用する。解析が終了した後には、解析結果を総合的にまとめ、論文投稿を行う予定である。
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