進行口腔癌に対して手術・放射線・化学療法の3つを組み合わせた治療を行っても、予後は依然満足いくものとなっていない。第4の治療法として免疫治療が期待されたが、いまだ標準治療になりえていないのが現状である。近年、癌は宿主の免疫を抑制的に制御し、免疫系による排除から逃れやすい環境を構築していることが示唆されている。特に骨髄由来免疫抑制細胞MDSC (Myeloid-Derived Suppressor Cells)がリンパ球機能の抑制に関わっていることが報告されてきている。MDSCを制御する事は、癌免疫療法の手助けとなると考えられ、今回我々は分子標的薬(Immunotoxin)を用いて、癌のみならずMDSCをターゲットにした治療法の開発を目指し、トランスレーショナル研究を行ってきた。 これまでの研究の成果としては、まず比較的多くのMDSCが発現し解析可能な4T1 breast cancer の腫瘍移植マウスにおいて、MDSCのカルチャーおよび解析方法について条件検討を行った。4T1 mouse modelからMDSCを抽出し、IL13Ra2の発現を観察した。脾臓細胞の中から、MDSC:CD11b(+)Gr-1(+)の細胞をsortingにて抽出し、FACS analysisにて解析したところ、CD11b(-)Gr-1(-)と比較して、CD11b(+)Gr-1(+)でIL-13Ra2が高発現していることが分かった。 マウス口腔癌細胞株であるSCC-7を用いて実験を進めたが、マウスへの腫瘍細胞の移植が安定して生着しないこともあったため、まずは4T1 mouse modelの系においてMDSCの実験を進めた。Sortingして得られたMDSCに対して、IL-13Ra2をターゲットにした分子標的薬によって、CD11b(+)Gr-1(+)細胞に対して殺細胞効果を観察できた。腫瘍のみならず、骨髄由来免疫抑制細胞MDSCをターゲットにした治療法の可能性が示唆された。
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