研究実績の概要 |
薬剤関連顎骨壊死(Medication Related Osteonecrosis of the Jaws: MRONJ)が2003年にMarxらによって報告されて以降,骨吸収抑制薬等の顎顔面領域に生じる合併症として問題となっている.根治的な治療法は確立されておらず,基本的には含嗽,局所洗浄,抗菌薬の投与などの保存療法が長期にわたり行われている.近年,遺伝子組み換えヒト副甲状腺ホルモンであるテリパラチド(Teriparatide; TPTD)が骨粗鬆症治療薬として承認された.2010年にはTPTDによりstage3のMRONJの病的骨折が治癒したとの報告が,The New England Journal of Medicineに掲載され,その後も同様の症例報告が散見されている.しかし,科学的根拠のある報告に乏しいため,われわれはMRONJモデルラットを作製し,MRONJへのTPTDの治療効果を検討した.生後8週の雄ラットを用いて,Zoledronate(0.1 mg/ kg/体)を週1回4週間皮下注射し,4週目に両側の下顎骨および大腿骨に骨穿孔を行い,歯周病原菌であるフリーズドライしたAggregatibacter actinomycetemcomitansを留置しMRONJを誘導した.その後4週間TPTD皮下注射(3回/週)投与群と非投与群において,新生骨面積・壊死骨面積・壊死骨周囲の破骨細胞数に着目し,比較検討した.TPTD投与群では非投与群と比較して,骨壊死面積の縮小化と骨穿孔部の新生骨面積の増加を認めた.また,壊死骨周囲における破骨細胞数の増加を認めた.臨床的にMRONJへの治療効果の報告が散見されているTPTDであるが,本研究により,MRONJにより形成された壊死骨の吸収を促進し,骨穿孔部への新生骨の形成を促進することが分かった.
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