研究課題
1H-MR spectroscopy (MRS)を用い、腫瘤性疾患に対する鑑別診断能の向上を図ることと病変の活動性や予後を予測することを目的としている。典型像を示さない病変の鑑別、活動性及び再発等の予後予測は極めて難しい。そこで我々はこの度申請する研究を通し、口腔・顎・顔面領域に発生した腫瘤性疾患の鑑別や予後予測を行う際に、従来の画像検査にMRSを加え、総合判断することを目指している。MRSによる病変の成分分析を加えることで、これまでとは異なった情報を得ることが可能となると考える。それにも関わらず、口腔・顎・顔面領域においてはその研究報告は極めて少なく、また診断への応用は困難とされているのが現状である。その理由には口腔・顎・顔面領域における磁場の不均一性、対象となる病変が大きくなければ十分なSNRを得ることが困難であるといった問題、周囲脂肪組織からのノイズが大きいといった問題等が挙げられる。我々はMRSのシークエンスの改善により、臨床応用の可能性を開いたと考える。我々のシークエンスを口腔・顎・顔面領域に応用することにより、正常構造物及び各種の腫瘤性疾患のスペクトルの解析を行う。その結果、これまでとは異なった視点から鑑別診断能の向上と予後予測が図れると考える。本研究は、口腔・顎・顔面領域に対するこれまでの画像診断学に加え1H-MRSによる成分分析を応用し、鑑別診断及び予後予測の更なる向上を目指す。
3: やや遅れている
健常者ボランティアの協力を得て、舌、唾液腺、咀嚼筋などそれぞれの撮像対象ごとに、コイルの選択や配置、積算回数やTEなど最適な撮像条件を検討した。疾患を有する患者による腫瘤性疾患のスペクトルの検討について、現在、ルーティンとしている撮像はT1強調画像、T2強調画像及び拡散強調画像である。これらの撮像にMRSを追加する形で行っている。MRSの撮像については当然ながら、予め同意を得ることができた患者のみを対象としている。PETや病理所見とも比較検討を行う計画である。各種検査が臨床上必要とされた患者及びMRSの同意が得られる患者数等(条件が揃っている患者数)がまだ少なく、各種検査の総合的な検討を行う論文作成には至っていない。
患者データについては、観測されたCholineとCreatinの量や比、その他の物質のピークを数値化し、病理学的所見との関連性について検討する。また、正常構造物のスペクトルとの比較も行い、有意に上昇する成分のピークを検討する。これにより、ボクセルが病変内部に完全に含まれない症例においても、その上昇したピークから鑑別診断の一助とできるよう解析結果を検討する。鑑別診断についてはMRSのみではなく、その他の画像所見と併せて総合判断することで診断精度が向上するよう検討する。DCEMRIから作成したTime intensity curveや拡散強調画像から作成したADC mapやDiffusional kurtosis imagingをもとに得られた、腫瘤のADC値やkurtosisを検討項目の一つとする。これらのデータと臨床所見及び確定診断とを比較していく。
必要なソフトウエア及び周辺機器購入について、発売日等の関係で遅れたため次年度使用となった。
来年度、早々に購入予定のため余剰分は使用可能となる予定。
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