研究課題/領域番号 |
26861581
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
香西 雄介 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (80550855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 超音波 / 骨密度 / 骨質 / 顎骨 |
研究実績の概要 |
平成26年度より、測定部位の制限が少ない反射型超音波骨強度測定装置の開発をめざして、本研究を開始した。神栄株式会社(神戸市)および株式会社センサ(石川県)の協力のもと、対側皮質骨からの反射波をとらえる超音波装置の実験機を作成し、研究に用いた。 平成26年度は、研究のベースとなる基礎的なデータを収集することを目的に、骨密度と超音波反射波との関係性を明らかにすべく実験を行った。まず、MD法骨密度測定で用いられる15段階の骨密度ファントムに皮質骨を見立てたアパタイトプレートを接着し、厚みなどの条件をそろえて、骨密度のみが異なる15個の特製ファントムを作成した。そのうえで、実験機にて骨密度ファントムのSpeed of Sound(SOS)を測定した。その結果、骨密度とSOSの間には強い相関があることが明らかになった。しかしながら、このファントムは実際の骨にみられる複雑な骨梁構造が省略されたシンプルな構造である。そこで、次の段階として、以前に実験に供された正常なラットと骨粗鬆症状態のラットの脛骨を用いて、実験機にて摘出骨のSOSを測定した。その結果、正常なラットと骨粗鬆症状態のラットとの間にはSOSに有意な差が認められることが確認されたが、骨密度との相関はファントムでの実験よりも明らかな低下を示した。このことは、骨梁構造がSOSに影響を及ぼしていることを示唆しており、現在、マイクロCTを用いてその詳細な解析を行っているところである。これらの研究成果は、今年度の放射線関連学会にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画では、初年度に実験動物の摘出骨を用いた詳細な基礎データの取得を行うことを予定していた。具体的には 健康なラットと骨粗鬆症モデルラットの脛骨を用い、骨密度、骨構造および骨強度の測定を行うことであった。骨密度測定にはpQCT(stratec社:QCT Research SA+)を、骨構造測定にはマイクロCT(日立メディコ社製MCT-CB 130F)を用いて測定を行う計画であった。この内容は、ほぼ予定通りに遂行された。骨強度測定を現在実施中である。また、これら測定データと実験機で測定したSOSとの比較を行う予定としており、これもほぼ予定通りに遂行された。また、当初の実験計画にはなかったことだが、この動物実験を行う前により基礎となるデータが必要と考え、骨密度ファントムを用いて骨密度とSOSの関係を明らかにする基礎実験を追加した。これにより、非常に有用な基礎的データが蓄積された。
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今後の研究の推進方策 |
今後、動物実験で得られた詳細な骨密度、骨構造、骨強度のデータと実験機ので得られるSOSとの関係を詳細に分析し、実験機の測定精度の安定化を図る必要がある。そのために、得られたSOSパラメータに対して、骨密度、骨構造、骨強度との相関係数と優位性に関する検定を行う。また、多変量解析によって、各パラメータに特異性(依存性)が認められるかの検定も行う。その後、研究を次のステップに進めるため、ボランティアを募り、臨床試験を開始する予定である。ボランティアの募集は、社会活動を営んでいるか或いは家庭で健常に生活している者を対象とする。募集には研究補助員も分担して担当する。ボランティアの骨強度を推定するため、DXAによる大腿骨と腰椎の骨密度測定(GE社製DPX-BRAVO:現有)、QUSによる踵骨の骨スティッフネス指数測定(GE社製A-1000 Insight:現有)を行う。さらに、顎骨の骨密度と骨構造測定を行うために、デジタルX線装置にて口内法のMD法を行う。これらのデータと実験機で測定した顎骨のSOSとの比較を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として超音波骨密度測定装置を購入するに当たり見積もりよりも安価で購入することが可能であったことと、学会発表にかかる旅費が予定よりも安価であったため次年度使用額が生じたと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、臨床実験が開始され、論文作成作業も本格化する。海外での研究成果発表も予定されている。そのため、旅費、謝金、翻訳や別刷料金などの支出が発生することが見込まれる。次年度使用額とあわせて、当初の使用計画に則って研究を遂行する。
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