平成26年度より、測定部位の制限が少ない反射型超音波骨強度測定装置の開発を目指して本研究を開始した。神栄株式会社(神戸市)および株式会社センサ(石川県)の協力のもと、対側皮質骨からの反射波をとらえる超音波測定装置の実験機を作成し、研究に用いた。平成26年度には、測定器の制度を検証するため、15段階の骨密度ファントムを作成し、そのspeed of sound(SOS)を測定した。その結果、骨密度とSOSの間に一定の相関が認められることが明らかになった。これらは、これまでの報告とも矛盾しないものであった。一方で、この骨密度ファントムは内部均一な素材であり、実際の骨にみられるような複雑な骨梁構造は認められないため、本測定装置が実際の骨でも測定精度を維持できることが重要である。そこで、平成27年度には実験的に骨粗鬆症を発症させたマウスと健康的なマウスの摘出骨を用いて実験機にてSOS測定を行った。その結果、正常マウス摘出骨と骨粗鬆症マウス摘出骨との間には一定の差が認められたものの、pQCTで測定した骨密度とSOSとの間には明らかな相関関係は認められなかった。この結果には、骨内部の複雑な骨梁の構造が超音波の伝播に影響を与えていると考えられた。マイクロCTにてマウス摘出骨の骨梁構造を測定し、その影響を検討した結果、骨梁構造パラメータがSOS与える影響に統計学的に有意な関連性を認めるパラメータは発見できなかったが、相対的には骨梁の複雑性(フラクタル次元)にSOSとの相関が認められることが明らかになった。
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