研究課題/領域番号 |
26861585
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
田中 宏樹 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍医化学部, リサーチレジデント (20725452)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 染色体異数性 |
研究実績の概要 |
本研究は、新規口腔癌自然発症マウスモデルの開発と染色体異数性による癌化・老化への影響を明らかにすることであり、本年度は前者はマウス個体作成中である。後者に関しては、我々が作製した分裂期特異的ビメンチンリン酸化不全マウスを用い2013年に報告した目の形態形成異常、白内障に加えて、皮膚組織において3か月齢のマウスは脂肪層の増多および脂肪組織の細胞核が大きくなっている(染色体異数性を示す核を示唆する)、14日月齢のマウスで脂肪層の減少を認めた。さらに、皮膚の損傷治癒の過程を検討したところ、変異マウス特異的に損傷治癒遅延を認め、この組織を詳細に検討したところ、経時的に皮膚線維芽細胞が、2核・娘細胞間ブリッジ架橋構造の出現、・多中心体の出現、染色体異数性の核の出現、DNA損傷・修復のマーカーであるgH2AXの上昇、老化マーカーの1つであるb-ガラクトシダーの上昇が一過性に認められた。このことは、早老症の1つの表現型である損傷治癒遅延は、染色体異数性を経て細胞老化を引き起こすことによって結果的に起こることを示唆している。さらに、我々が作製したマウスに3週間おきに皮膚に損傷を加えて常時、染色体異数性の細胞が存在するような環境での発がんの有無を検討したが、本マウスでは発がんを認めなかった。 これらのことは、分裂期の制御異常によって引き起こされる染色体異数性は癌化でなくむしろ老化を引き起こし、癌化の障壁になっているという概念を支持するデータである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規口腔癌自然発症モデル動物の開発に関しては、変異動物の確立後に発がんの有無を検討する為、詳細な解析は次年度以降に行う。 Aneuploidyを呈するマウスの癌化への影響に関しては、皮膚脂肪組織、皮膚線維芽細胞の染色体異数性と老化に関する報告を、国内・海外の学会で研究報告を行い、現在、論文投稿中であり、次年度5月に論文として発表される予定である。 それ故、研究目的は達成していると考えられる。 さらに、ビメンチン変異マウスを用いた3-メチルコラントレインを皮下投与して化学発癌試験を行ったところ、野生型・ヘテロ変異マウスに比べて腫瘍塊の形成にかかる期間が長くなり、腫瘍による生存曲線が延長することを確認している。 現在、この現象から、aneuploidyとがん・老化との関係をさらに詳細に解析しており、研究目的以上の結果を期待できる可能性もあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新規口腔癌自然発症モデル動物の開発に関しては、マウス確立後、生存曲線、全身の組織の検討を予定している。Aneuploidyを呈するマウスの癌化への影響に関しては、これまでに化学発癌実験における腫瘍抵抗性の結果を得ているが、今後は、腫瘍移植の系を確立し、ビメンチン発現しているCAF(がん間質繊維芽細胞)やTAM(腫瘍関連マクロファージ)の機能解析を展開する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に、マウスのスクリーリングに必要な、RI専用のハイブリオーブンを購入する為。
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次年度使用額の使用計画 |
マウス作製の為、ES細胞・マウステイルの遺伝子相同組み換えの確認実験を予定している。
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