研究課題/領域番号 |
26861587
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
角田 晋一 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70707025)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グラスアイオノマーセメント / 中和反応 |
研究実績の概要 |
申請者が行った予備実験では、本邦ではう蝕予防に用いられるシーラント材(小窩裂溝填塞材)と歯質試料とを酸に一週間浸漬したところ、①シーラント材を含まない実験での歯質脱灰に比べて、②GIを含有すると歯質は保存されていたが、③フッ素イオンを放出するポリマー系材料ではむしろ脱灰を促進することが、SEМ像から著明であった。う蝕は酸による脱灰から誘発されると考えられている。従って予備実験では、中和による脱灰抑制作用が効果的であった。歯科保存学で用いられる材料は、歯質もしくは修復物への接着性を有する。中でもGI系の材料を用いたう蝕治療やう蝕予防の効果は高く、レジン系材料に比べて予後が良いことがかねてから報告されてきた。そしてこれら多くの報告において、フッ化物による効果が述べられてきた。従来より注目されてきたフッ素の抗う蝕作用は、2つのアプローチから考察されてきた。つまり、う蝕病原性細菌への効果と、歯質への効果である。さらにそれぞれ細かなメカニズムがあり、①う蝕病原性細菌を殺菌する、②細菌の代謝を抑制する、③ヒドロキシアパタイトのフッ化により歯質を強化する、④再石灰化の促進するなどと説明されてきた。さらにグラスアイオノマー層に含有されているホウ素やストロンチウムなど、近年はフッ素以外についても様々なイオンによるう蝕細菌もしくは歯質への効果についても、研究が進んでいる。 以上の経緯から平成26年度における研究はシーラント材と歯質の同時浸漬を行い、実験溶液への歯質の溶出及びシーラント材の溶出、またこれらの結果である溶液の酸性度の変化を分析した。そしてこれらの実験結果から検討を行い、まとめた論文は現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在論文の査読中であるが、受理される可能性は高いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も、歯質と歯科材料を酸性溶液に浸漬する実験モデルを行う。浸漬期間中における日々の酸性度変化を追跡し、浸漬期間終了後に溶液内のフッ素イオン及びその他金属イオン濃度を分析する。分析には、pHメータ、フッ素メータ、プラズマ誘導発光分光分析を用いる。浸漬を終了した歯質試料と歯科材料試料の超微小形態学的観察(走査電子顕微鏡)を行う。歯質についてはエナメル質と象牙質についてそれぞれの検討を行うが、年度ごとに別々に研究する。また、今後検討を行う歯科材料として一般に利用される保存修復材料を充てる。歯科材料は、市販のフッ素等のイオンを放出するGI材およびコンポマーを用いる。平成27年度と28年度は、保存修復材料について年度ごとにそれぞれエナメル質と象牙質について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿費用として計画していた額である。現在査読中であり、平成27年度中の掲載受理とそれに伴い使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、掲載受理と研究費の使用は平成27年度に行う予定である。その他研究計画は申請書に沿った進捗である。
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