研究課題
前年度すなわち平成26年度において取りまとめを行っていた研究について、論文にまとめて投稿し、国際誌への投稿が認められた。歯の硬組織は、エナメル質と象牙質・セメント質に分類されるが、エナメル質と予防歯科用材料に対する報告者の検証は、ひと段落ついたことになる。歯科充填材料と象牙質に対する検証を平成27年度から開始した。実験の遂行についてはおおむね研究計画内である。ところで、前年度の研究では報告者自身が研究を施行していたが、本年度から実際の遂行に当たり所属教室の教室員に協力を得て、報告者の監督の下で研究を行っている。そこで、実験手法そのものはさほど難しいものではなく、再現性が高い方法であることが再認識された。さらに、主に研究の分析工程の、外部協力者へ委託している部分についても、報告者自身が実際に行えるよう委託先研究協力者から手法の習熟訓練を受け、安定した研究結果が得られるよう改善している。さて、主に平成27年度で行った実験の成果を当年度中の学会で公表したところ、さらなる検証が必要であると認められたため、再検討を行った。そこでさらに、平成28年度中での追加試験実施も予定している。研究データの検討や検証を研究協力者とともに行い、これらを取りまとめ、本年度中に公表することを予定している。平成28年度はこれまでの研究成果を発表し、また一方でエナメル質と歯科充填材料についての研究を実施し検討を行うことを予定している。
2: おおむね順調に進展している
本年は、あらかじめ計画していた象牙質と各種歯科充填材料を用いた実験を試行した。具体的には、ヒト抜去歯から作製した象牙質試料と、クラレノリタケデンタル社製クリアフィルAP-X(A2)、松風社製ビューティフィルⅡ(A2)、ジーシー社製フジⅨGP(A2)の3種の充填材を用いた。これらの試料を象牙質試料については、歯科用ポータブルハンドピースを用いて3×3×1ミリの角柱試料を作製した。計24個の象牙質試料を、上記の規定値から各辺について±5パーセント以下の誤差であった。また、歯科充填材料については、直径12ミリ高さ1ミリの円柱型試料をステンレス製モールドを用いて作製した。ク社製品と松社製品については光重合を十分に行い硬化させた。ジ社製品については、1次硬化後に37度チャンバーで2日間保管し、2次硬化を進行させた。これらのヒト歯由来試料および充填材料試料は、整形、未重合層の除去およびバリの除去のために、2000番手の耐水研磨紙を用いて、流水化で研磨を行った。その後、実験用ペーパータオルで、適宜、余分な水分を除去した。これらを準備する一方で、pH4.0の乳酸水溶液を脱イオン蒸留水を用いて作製した。以上の通り作成した各試料に関して、申請書に記載した要領で浸漬し、実験を開始した。引き続き、浸漬した溶液のpHについて一週間毎日測定し、さらに一週間後に試料を撤去したのちに溶液内に含まれるカルシウム、リン、バリウム、シリカおよびアルミニウムの各イオン濃度を測定した。なお、各種測定前には新しい標準液を用いて検量線を作製した。得られたデータについて、現在検証中である。
pHを主眼に置いたう蝕生成およびう蝕抑制の研究は、かつては多くの報告があったものの、近年ではレアな研究テーマであることは認めよう。しかしながら、かつての研究方法はpH測定および微小形態からの考察であったが、近年の各種測定機器の進歩に伴い、本研究の実験方法のようにpH測定に微量元素の定性・定量分析を組み合わせることで、あらたな知見が得られるものと考えている。ところで、平成28年度については、課題申請の内容に沿った、エナメル質と前述した修復材料を用いた比較実験を行いつつ、再度検証を行うべき部分についても実施する予定である。なお研究課題としては、各歯質について各歯科材料との相互作用について検討することとしたが、エナメル質と象牙質における比較検討も行いたいと考えている。
次年度使用額のうち、約38万円分については、報告者の所属研究機関における会計事務手続きの関係から、次年度処理扱いであると会計担当部署から報告を受けている。平成27年度に発表する予定であった論文について現在執筆中であり、その投稿費用として約10万円を予定している。
会計処理は、本報告書記入段階ですでに執行されている。また、研究成果の公表は計画に沿って行いたい。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Journal of Dentistry
巻: 43 ページ: 1285-1289
10.1016/j.jdent.2015.06.013