研究課題/領域番号 |
26861589
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小泉 悠 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (70635549)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯髄 / 歯髄幹細胞 / Wnt / 硬組織形成 / 象牙芽細胞 |
研究実績の概要 |
ヒト歯髄組織には未分化間葉系の歯髄幹細胞が存在し、進行したう蝕といった生体の外的侵襲に対し、硬組織形成性の象牙芽細胞に分化し、物理的バリアである修復象牙質の形成を誘導することが知られている。象牙芽細胞は歯の発生過程において、内エナメル上皮と間葉系組織である歯乳頭との相互作用により分化誘導されるが、成熟した歯髄内においては上皮細胞あるいは上皮系のマトリックスは存在しない。このような上皮が存在しない状況において、歯髄幹細胞から象牙芽細胞に分化するためのシステムが歯髄には備わっていると推察される。その際に、重要な働きを担うと考えられるのがWntシグナルである。これまでに、歯髄細胞を用い、硬組織形成細胞へのコミットメントにおいて重要な因子であるBmp2を用いて分化誘導を図ったところ、Wntシグナルが動いていることが明らかになった。なお、TGFbも歯髄における象牙芽細胞誘導において重要な働きを担っていると報告されているが、歯髄細胞にTGFbを添加しても硬組織細胞マーカーである、アルカリフォスファターゼ、オステオカルシンなどの遺伝子発現の上昇は確認できなかった。このBmp2による硬組織細胞へのコミットメントにより、歯髄細胞におけるアルカリフォスファターゼ、オステオカルシンの発現上昇のみならず、象牙芽細胞マーカーの一つであるデンティンシアロプロテインの発現上昇が確認された。Bmp2による分化誘導に伴い、多くのWntファミリーの発現が上昇し、さらにWntシグナル下流の遺伝子であるbCatheninの核内移行が認められたことから、Wntファミリーが象牙芽細胞分化に深くかかわっていることが明らかになった。特にWnt11が成熟歯髄特異的に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シグナルカスケードについて包括的に検討することを計画しているが、Bmpシグナルの下流で動くSmadとWntシグナルカスケードとのクロストークについて十分な解析ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
早急にBmpシグナルとWntシグナルのクロストークについて解析を進める。シグナルのインヒビターを用いるのが最も近道であると思われるため、種々のインヒビターを用いた検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
シグナルカスケードのクロストーク解析にかかる研究の進行が遅れており、それにかかる経費を次年度としたため、経費繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
シグナル阻害因子等の購入により当初計画に沿った研究の遂行が可能となる。早急に実施する予定である。
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