研究実績の概要 |
試作バイオガラスの作製:SiO2-Na2O-CaO-P2O5-SrO系生体活性ガラスを作製する。Na2O 24.5wt%, CaO 24.5wt%, SiO2 45wt%, P2O5 6wt%の組成ガラスをcontrolガラスとして、Srを6wt%、12wt%をCaと代替した3種類の試作ガラスを作製した(Sr6, Sr12)。SiO2, Na2CO3, CaCO3, NaH2PO4・2H2O, SrCO3を白金るつぼに入れ、1200℃にて2時間焼成を行ったのち、ステンレスの容器にて急冷し、バイオガラスを得ることができた。 XRD分析:非結晶(ガラス)であることを確認した。蛍光エックス線分析:作製したバイオガラスの組成がおおよそ設計通りにできていることを確認した。 遊星ボールミルによるバイオガラスの粉砕:ジルコニア容器にガラス粉末:ZrO2ボール=1 : 10にて投入、回転数150rpmにて5時間大気中で粉砕を行うと、SEM観察および粒度測定により、平均粒径5~10μmの市販の無機セメントと同レベルの細かさの粉末が得られることが判った。 バイオガラスのイオン徐放特性の評価 (ICP分析) :上記にて粉砕したバイオガラス(セメントさじ1杯)を蒸留水10mlに浸漬し、21日まで成分を溶出させる。回収した溶出液をICP発光分光分析法を用いて含有するSr, CaおよびSi濃度を測定した。その結果、日が経過するごとにイオン溶出濃度は高くなり、SrイオンはSr12>Sr6>controlの順で配合比率と溶出濃度に相関がみられた。試作セメントのイオン徐放特性の評価:試作バイオガラスと既成のGICを1 :4にて混和し、試作セメントを作製し、21日まで蒸留水に浸漬し、溶出するSr, CaおよびSiイオン濃度を測定したところ、初期の溶出濃度が高いものの、21日までイオンの持続的な溶出が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
試作セメントの作製に重点を置く。さまざまな種類のガラスを設計し、作製し、それを組み合わせて、セメントとして使用でき、かつ、硬組織形成細胞の分化を促進する作用をもつ材料の組成を決定していく。バイオガラス粉末の作製手順は今年度確立できたので、滞りなく行えると考えられる。 まず、今年度作製した既存のセメントと試作バイオガラスを組み合わせた試作セメントの硬組織形成細胞の増殖、分化、石灰化に対する影響を検索する。具体的には、細胞は、マウス由来の骨芽細胞様細胞であるMC3T3-E1を使用し、試作セメント上で細胞培養を行ったのち、MTTアッセイおよび付着細胞のSEM観察により細胞の増殖を評価し、ALP活性測定およびアリザリンレッド染色により細胞の分化を評価していく。 そのデータをもとに、試作バイオガラスをすべて自分で設計したものを作製、試作無機セメントを作製する。万能試験機を用いて、セメント硬化体試料の圧縮強さを測定し、被膜厚さの測定:、ビッカース硬さを測定し、セメントの材料特性を評価する。また、今年度と同様に、セメント硬化試料を蒸留水に浸漬し、37℃で静置し、1, 3, 7, 14, 21日まで成分を溶出させ、回収した溶出液を直径0.22 μmのフィルターにて濾過し、ICP発光分光分析法を用いて含有するSr, CaおよびSi濃度を測定する。また、同様にMTTアッセイ、ALP活性測定およびアリザリンレッド染色を行い、試作セメントの細胞の増殖、分化、石灰化促進作用の検討を行い、硬組織形成細胞の分化を促進する生体機能性セメントの開発を行っていく。
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