研究課題
本研究は、象牙質や骨といった硬組織細胞外基質に多く存在するインテグリン結合配列RGD motif (アルギニン-グリシン-アスパラギン酸: Arg-Gly-Asp) を持つタンパク質が、骨においてはリモデリングにより、歯牙においてはう蝕や酸蝕による脱灰により溶出し、歯髄、象牙芽、骨芽細胞膜上のインテグリン受容体を刺激し、細胞接着、増殖、遊走、分化等を誘導することで組織の創傷治癒・再生に寄与している可能性を検討することである。我々は、歯髄・象牙質細胞外基質タンパクであるDentin phosphophoryn (DPP) が、そのRGD motif近傍で切断を受けると、DPPによる細胞刺激活性が大きく上昇することを見出した。そこで本研究では、切断を担うプロテアーゼの同定し、同定したプロテアーゼがDPPのみならず種々の細胞外基質中のRGD motif近傍を切断し活性化するか、それら細胞外基質の細胞刺激活性を増強し得るかを明らかにすることで、新規に同定されたプロテアーゼを、歯冠破折後の歯髄組織創傷治癒誘導や将来的な歯髄組織再生療法に応用し得るかを検討することを目的としている。ペプチドデータベースであるMEROPSにてDPPの切断活性部位であるAla-Ser bondを含む近似ペプチド配列を切断することが報告されているプロテアーゼを検索すると、ADAMs familyに属するプロテアーゼ群とCathepsin L, B, SなどのCathepsin群が見出された。これらプロテアーゼで組み換えDPPタンパク質を切断すると、DPP切断活性を持つものが見られた。しかしながらCathepsin群による切断において、分解後のDPPタンパクをStains-allで検討すると、バンドが複数見られたことからAla-Ser bondに留まらず、複数のサイトで切断していることが示唆された。歯髄組織においていくつかのCathepsinが発現していることがすでに報告されているが、実際の歯髄組織内でCathepsinによるDPP切断が、その活性出現に寄与しているかは今後の検討課題である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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