研究課題/領域番号 |
26861597
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木村 智子 徳島大学, 大学病院, 助教 (20581367)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯学 |
研究実績の概要 |
Streptococcus mutansの主な病原因子であるバイオフィルム形成ならびに酸産生にはスクロースが深く関与している。スクロース輸送機構の一つであるホスホエノールピルビン酸依存ホスホトランスフェラーゼ系(PEP-PTS)においてスクロースを菌体内へ取り込むのに必須な酵素をコードするscrA遺伝子の役割を明らかにし,バイオフィルム形成をはじめとする他の病原因子との関連を解明していくことは,う蝕の発症メカニズムを探る上で重要である。現在に至るまで,S. mutans UA159株を親株として作製したscrA遺伝子改変株を用いて,バイオフィルム形成におけるグルカンの量的解析や関連遺伝子の発現解析を行い,scrA遺伝子がグルカン合成に関与している可能性があることを明らかにしてきた。より詳細なメカニズムを検索するために,今回菌体表面の疎水性の測定を行い,親株と遺伝子改変株について比較検討した。 親株(S. mutans UA159株)とscrA遺伝子改変株をBHI液体培地で培養し,定常期の菌を遠心にて集菌した。これにリン酸マグネシウム・尿酸緩衝液を加えて吸光度を調製し,ヘキサデカンを加えて撹拌し静置した後の吸光度を測定した。疎水性は,ヘキサデカンを加える前後の吸光度の減少率で評価を行ったところ,scrA遺伝子改変株は親株と同程度の疎水性を示した。 この結果より,scrA遺伝子は,付着に関与する菌体表層の構造および性状のなかで表面の疎水性には影響を及ぼしていないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,S. mutans UA159株を親株として作製したscrA遺伝子改変株を用いて疎水性の評価を行うとともに,ウシ象牙質を用いて象牙細管へのS. mutans菌の侵入状態の観察に用いる人工象牙質う蝕モデルを作製することであった。 現在,疎水性の評価については遂行したが,人工象牙質モデルは作製途中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在途中となっている人工象牙質モデルの作製を行う。ウシ前歯を解剖学的歯頸線付近で切断し,歯冠部の歯髄および軟組織を除去した後,歯軸方向に垂直な約500μmの厚さの象牙質板を作製する。この象牙質板を,試験管中にワイヤーで懸垂して親株およびscrA遺伝子改変株の培養液中に浸漬し,液体培地を2日ごとに交換しながら24日間培養する。 培養終了後,象牙質板試料を固定,脱水し,エポキシ樹脂に包埋して60℃で24時間加熱重合する。得られたブロックより,象牙細管が可及的に縦断されるような準薄切片を作製し,トルイジンブルーで染色した後,光学顕微鏡にて観察し撮影を行う。視野に認められる象牙細管数を計測し,総象牙細管数に対する菌の侵入が認められた象牙細管の割合を象牙細管侵入率として算出し,両菌株で比較検討する。 これにより,scrA遺伝子が菌の象牙細管への侵入に影響を与えているかどうかが明らかになると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウシ前歯より象牙質を作製するためマイクロカッターを購入予定であったが,今年度は象牙質板の作製を行うことができなかったため購入していない。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度への繰越額は,マイクロカッターの購入に使用する予定である。 また,今年度の研究計画がすべて遂行できておらず途中となっており,今年度使用を予定していた研究費を次年度に繰り越して研究を遂行する。
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