研究課題/領域番号 |
26861602
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
鷲尾 絢子 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (10582786)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオガラス / 歯科用セメント / ハイドロキシアパタイト / 生体親和性 |
研究実績の概要 |
本研究は、象牙質・歯髄複合体および根尖歯周組織再生療法の確立にある最終目標の達成に向け、生体医療材料の一種である「バイオガラス」を配合した歯科用セメント(NSY-222)の研究開発を行うことである。当該年度では、このセメントを臨床応用していくために、物理学的特性、抗菌能、および生体親和性を有することを明らかにすることを第一の目的としている。 今回、NSY-222の溶解率、エックス線造影性、NSY-222からの溶出物、および象牙質への封鎖性試験を検討し、物理学的特性を評価した。また、齲蝕の原因菌であるStreptococcus mutansに対する抗菌能を阻止円測定によって検討する。さらに、象牙芽細胞様細胞株、骨芽細胞様細胞株、歯根膜細胞株、およびNerve Growth Factor(NGF)により神経細胞へ分化する細胞株にNSY-222を作用させ、一定時間培養後、細胞の形態変化、および細胞増殖能に及ぼす影響を位相差顕微鏡観察およびトリパンブルー染色法を用いて生物学的な評価を行った。 NSY-222の溶解率は2.0%、エックス線造影性はAl7.2 mmを示し、NSY-222からは継続的にカルシウム及びケイ素の溶出が認められた。そして、象牙細管内にHAp様結晶析出によるタグ様構造が形成され、高い象牙質への封鎖性が得られた。また、NSY-222に抗菌性は認められなかった。さらに、各種細胞に対してNSY-222を作用させたところ、細胞形態は通常の細胞形態と比較して、変化は認められず、細胞毒性も示さなかった。 したがって、NSY-222は歯科用材料として適した物性を有しており、抗菌性は示さないものの細胞への毒性も示さないことがわかった。また、NSY-222の溶出成分より、各種細胞の分化誘導促進が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した研究期間内に(1)NSY-222の物理学的特性の解析、(2)NSY-222の抗菌性及び生体適合性の解析、(3)組織創傷治癒・再生誘導を目的とした生体医療材料の開発の3点について解明することを目的としている。このうち(1)(2)の2点についてはおおよその結果がでているため、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標である象牙質・歯髄複合体および根尖歯周組織再生療法の確立の達成に向け、第二の目的であるNSY-222とFibroblast Growth Factor-2(FGF-2)やPlatelet-Rich Plasma(PRP)を徐放するゼラチンハイドロゲルを組み合わせ、組織の創傷治癒・再生を誘導する新たな生体医療材料の開発に取り組む。 まず、FGF-2やPRPを徐放する供与ゼラチンハイドロゲルと別にバイオガラスを配合したゼラチンハイドロゲルを作製し、in vitroでの分解性試験や徐放試験などによりその物性を評価する。次に、in vivoの断髄モデルおよび根尖性歯周炎モデルにおいて、断髄部および根管内に充填する材料として、NSY-222およびゼゼラチンハイドロゲル、FGF-2、およびPRPを用い、(1)コントロール、(2)NSY-222単独、(3)NSY-222 + FGF-2含浸ゼラチンハイドロゲル、(4) NSY-222 + PRP含浸ゼラチンハイドロゲルを実験群とする。ヘマトキシリン-エオシン染色および免疫組織化学的手法を用いて象牙質形成や根尖部歯周組織形成量などを評価し、NSY-222、およびFGF-2、PRP含浸ゼラチンハイドロゲルの有効性を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度のin vitroの実験、特に、NSY-222の物理学的特性の解析を行う際に使用する消耗品の使用が想定より少なかったため、当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ハイドロゲルスキャフォールドの作製を行うことになったこと、動物実験を主におこなっていき実験群が多いことから、ハイドロゲルの作製するための材料費、in vitroで使用する試薬、プラスチック製品などの消耗品、および動物(ラット)、動物実験器具一式などに使用する。
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