本研究の目的は,生体親和性に優れた自己硬化性リン酸カルシウム製剤およびフルオロアルミノカルシウムシリケート含有知覚過敏抑制材について,非破壊的かつ経時的に物質の状態変化を測定可能である超音波透過法を用いて定量化するとともに,レーザー顕微鏡による非破壊的な表面性状の観察および走査電子顕微鏡による割断面の観察あるいは元素組成分析を行うことで,これらが有する再石灰化能あるいは象牙質透過性について検討し,知覚過敏抑制効果を評価することである。 昨年度の実験では自己硬化性リン酸カルシウム製剤の知覚過敏抑制効果を検討したが,今年度の実験ではフルオロアルミノカルシウムシリケート含有知覚過敏抑制材の知覚過敏抑制効果を検討した。すなわち,象牙質知覚過敏モデルを作製し,フルオロアルミノカルシウムシリケート含有知覚過敏材を塗布した後に口腔内環境をシミュレートしたpHサイクルに曝すことで知覚過敏抑制効果を評価した。28日間のpHサイクルに先立って,試片に対してフルオロアルミノカルシウムシリケート含有知覚過敏抑制材を1度のみ塗布した場合と,7日毎に反復塗布した場合では,塗布せずにpHサイクルに浸漬した場合と比較して超音波縦波音速が上昇した。また,レーザー顕微鏡観察からは象牙細管の大部分が封鎖され,走査電子顕微鏡観察では象牙質の深部にまでフルオロアルミノカルシウムシリケート含有知覚過敏抑制材あるいはそれを塗布したことによって生じたと考えられる析出物が観察された。歯質表層の元素組成分析においては,塗布前がCa/P=1.84であったのに対し,反復塗布したものでは2.18にCa/P比が上昇し,歯質の構成成分にわずかな変化が認められた。 これらのことから,フルオロアルミノカルシウムシリケート含有知覚過敏抑制材は,自己硬化性リン酸カルシウム製剤と同等の知覚過敏抑制効果が期待できることが示された。
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