研究課題/領域番号 |
26861608
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
瀧本 正行 日本大学, 歯学部, 専修医 (90723239)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 根面齲蝕 / 脱灰抑制 / 再石灰化 / ペプチド(P11-4) / 超音波透過法 |
研究実績の概要 |
根面齲蝕への非侵襲的なアプローチとして,バイオアクティブな性質を有するペプチドP11-4を含有するCurodont (Credentis)に着目し,口腔内環境をシミュレートしたpHサイクルにペプチドを応用した場合の歯根部象牙質の脱灰抑制あるいは再石灰化効果について,超音波透過法を用いて検討するとともに,SEM観察を行った。 ウシ抜去下顎前歯の歯根部象牙質をブロックとして切り出したものを象牙質試片とした。この象牙質試片の保管条件としては,ペプチド未塗布で実験期間を通じて人工唾液中に保管した試片をコントロール群,ペプチド未塗布で1日2回,0.1 M乳酸緩衝液に10分間浸漬した後,人工唾液に保管した試片を脱灰群とした。ペプチドを塗布し,これ脱灰群と同じ保管条件にした試片をペプチド群とした。これらの象牙質試片を透過する超音波伝播時間の変化を,超音波測定装置を用いて経時的に計測した。 コントロール群では実験期間を通じて音速の著明な変化は認められないものの,脱灰群では他の条件と比較して経時的にその音速が低下する傾向が認められた。一方,ペプチド群では,実験開始7日後までに音速が上昇し,それ以降でプラトーに達する傾向が認められた。また,実験開始28日後のSEM観察では,コントロール群では実験開始前と比較して大きな変化は認められなかったが,脱灰群では象牙細管が漏斗状に拡大し,コラーゲン線維の露出が観察された。一方,ペプチド群では象牙細管内に結晶様の堆積物が認められた。これらの結果から,塗布されたペプチドが象牙質試片脱灰部および象牙細管内に浸透することで,酸に対する緩衝材として機能するとともに,カルシウムイオンを吸着する足場となることで脱灰抑制あるいは再石灰化に影響を及ぼした可能性が考えられ,ペプチドP11-4は,非侵襲的な根面齲蝕処置を確立するための一助となることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するために必要な超音波透過法の測定手技は確立されている。さらに,得られたデータを申請者の所属する主任教授に随時報告し,研究計画,内容に対するフィードバックを受けることで,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の実験によって得られた基礎的データを基に,ウシ抜去歯歯根部象牙質に作製した根面齲蝕病巣モデルにペプチドを応用した場合の,象牙質表層および深部での脱灰および再石灰化程度を,光干渉断層画像法(OCT)によるイメージ像と,その最大ピーク強度値および1/e2幅から詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
OCT関連消耗品の購入がOCT観察用根面齲蝕病巣モデルの作製に時間を要した関係により間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
ウシ抜去歯歯根部象牙質を脱灰および再石灰化させた場合の状態変化を観察するため,ウシ歯,歯質脱灰・再石灰化用試薬およびOCTおよびレーザ顕微鏡関連消耗品の購入に対して使用する。また,得られた研究成果を海外学術会議および論文にて発表するのにかかる費用に使用する。
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