研究課題/領域番号 |
26861613
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
稲本 京子 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (00469008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機能的近赤外分光法 / 多機能心電計 / 周波数解析 / 痛み / 客観的評価法 |
研究実績の概要 |
機能的近赤外分光法(fNIRS)装置を用いて、痛み刺激による脳血流の変化を測定し、賦活化する脳部位の検索を行った。被験者は、健常者23名とし、痛み刺激として、ポケットプロービングを用い、軽度の痛み刺激を上顎右側中切歯の周囲組織に負荷した。データ分析は,ポケットプロービング直前の安静時とポケットプロービング時のそれぞれ1分間から得られたoxy-Hbの平均値(oxy-Hb値)をチャンネルごとに算出した。また、ポケットプロービング実施時のoxy-Hb値から安静時oxy-Hb値を減じてoxy-Hb変化量を算出した。その結果、痛み刺激を負荷することにより、前頭前野のoxy-Hbは、ほぼ全ての領域で減少傾向を示した。特に、痛み刺激を負荷した対側の上前頭回、中前頭回、上・中・下前頭回眼窩部におけるoxy-Hbが有意に減少することが明らかになった。これらの結果は、Neuroscience Lettersに論文投稿し受理された。 また、多機能心電計(レーダーサーク・ペイン)を用いて、痛み刺激時の心電図電位変動の検討を行った。被験者は、健常者8名とし、fNIRSでの実験と同様、痛み刺激として、ポケットプロービングを用い、軽度の痛み刺激を上顎右側中切歯の周囲組織に負荷した。心電計のシール型貼り付け電極を4カ所に貼付し、実験開始の安静時状態から実験終了時まで心電図を連続的に記録した。第Ⅲ誘導から得られた心電図原波形のR波をウェーブレット解析し、低周波(LF)成分を抽出した。分析は、プロービング前の安静時およびプロービング時の1分間におけるLF成分のパワースペクトルアンプリチュード(PSA)、及びPSAの曲線下面積を比較した。プロービング時のPSAの曲線下面積は、安静時と比較して有意差が認められ、レーダーサーク・ペインの分析方法としては、PSA値より、PSAの曲線下面積を求める方が有効と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fNIRSに関しては、痛み刺激による脳血流の変化を測定し、賦活化する脳部位の検索を行うことができた。また、レーダーサーク・ペインに関しては、痛み刺激時の心電図電位変動の分析方法として、心電図原波形のR波をウェーブレット解析し、低周波成分のパワースペクトルアンプリチュードの曲線下面積を求める方が有効であることがわかった。 以上より、平成26年度の研究計画は、研究計画調書に記述した通りに順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、研究計画調書に記述した予定通りに研究を遂行していく予定である。すなわち、fNIRSに関しては、主観的評価であるVAS値も同時に採得し、主観的データとfNIRSから得た客観的データの相関性の検討を行っていく。また、fNIRS測定値に痛みに対する認知的要素がどの程度影響しているのかを検討するため、被験者に「実験的痛み刺激を与える」ことを説明したのち、実際に口腔内に痛み刺激を負荷した時(疼痛群)と負荷しない時(プラセボ群)の脳血流動態の違いを測定する。また、レーダーサーク・ペインに関しては、fNIRS同様にプラセボ効果についての検証、主観的評価および心理的・精神的側面関連指標との関連についての検索をする予定である。また歯科臨床での応用を考えると、着衣のままで電極を貼付し心電図測定できることが求められるため、電極を手掌や足首に貼付した場合と、従来通りの腹部や胸部に貼付した場合とで測定値の違いを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、研究成果を論文投稿という形で発表をし、当初予定していた学会での発表を行わなかったので、旅費を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、研究結果を国内と海外の学会で発表する予定であるため、旅費に充てる。また追加の論文を投稿予定であるため、校正費や投稿代に充てる。
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