本研究の目的は,睡眠時ブラキシズム(SB)の「問診・臨床診査による診断」の信頼性を検証し,より信頼性の高いSBの臨床診断法を模索・検証することである. まず,別目的で調査完了しているデータを用い,SB診断における問診の信頼性・妥当性の検証を行った.SBの自覚・他覚に関する問診票の回答と,携帯型筋電計による睡眠時咀嚼筋活動の測定記録を基に,解析・検証を行った.その結果,SBを予測する敏感度は77.3%,特異度は45.1%であり,SB診断における問診の信頼性はそれほど高くなく,問診のみでSBを診断することは望ましくない可能性が示唆された. 次に,臨床診査または問診・臨床診査を併せて用いることによる,SB診断の信頼性について検証を行った.顎関節症やSB関連の症状の訴えを持つ患者を対象とし,SBの自覚・他覚に関する問診と臨床所見(起床時の顎・頭・歯の症状,歯の咬耗)に関する診査項目を抽出し,問診・臨床所見の違いにより睡眠時咬筋活動状態に差があるか否かの検討を行った.結果,臨床所見を単独で持つ群と持たない群の間で咬筋活動波形数に有意な差は認められなかったが,他者からの歯ぎしりの指摘と歯の咬耗の両者を持つ場合は,両者を持たない被験者と比較して有意に大きい咬筋活動波形数が認められた 今回はデータの収集に時間を要したため,十分な被験者数を得ることができなかったが,今後被験者数を増やして,項目の組み合わせ,あるいは,phasic,tonicなどの咬筋活動様式の細分類との関係などを含め,さらに検討が必要と考えられた.
|