研究実績の概要 |
頭頸部腫瘍の外科的切除後には,摂食,嚥下,発語などの機能障害や審美障害が後遺する.顎義歯の装着は歯科補綴的に機能及び審美性の回復をはかり,患者の生活の質の向上に寄与している.一方で,顎義歯は一般的な義歯と比較して複雑な形態を有することから,装着による機能回復という利点はあるものの,義歯調整期間が長くなることもあり, 違和感や不快症状を生じている可能性がある. 本研究は一般的な義歯と比べ複雑な形態を有し, 調整が難しく,より義歯の安定や装着感が得にくい頭頸部腫瘍の外科的切除後に装着する顎義歯を研究対象とし,調整前後による義歯の安定や装着感の心理的な影響について唾液中ストレスマーカーの1つであるコルチゾールを計測し,従来の主観的評価と合わせて義歯の安定度や装着感について検討することを目的とした. 本年度は頭頸部腫瘍による顎欠損を伴い, 顎義歯製作を行った患者に対し, 顎義歯調整のため来院した際に, 4回にわたり診療前後の唾液の採取, Profile of Mood States(POMS)アンケート, 平井らの食品アンケート, University of Washington Quality of Life (UW-QOL)アンケート, Geriatric Oral Health Assessment Index (GOHAI)アンケートを実施した. 唾液中コルチゾール値の測定にはsalivary cortisol enzyme immunoassay kit (salimetrics社)を用い, 4回の採取における唾液中コルチゾール値及びアンケート値について比較検討を行った. その結果, 診療前後における唾液中コルチゾール値の優位な減少, 及び年齢による差が認められた.
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