研究実績の概要 |
Co-Cr-Mo合金粉末 (EOS CobaltChrome MP1, EOS) をレーザー積層造形装置 (EOSINT M280, EOS) に供し,クラスプ形状を有する疲労試験片を製作した.試料はクラスプが造形方向に対して0° (平行) , 45°, 90°(垂直)となるような3方向で製作した.疲労試験に先立ちクラスプ表面の粗さ測定を行った.疲労試験はクラスプ先端部に対して0.25 mmおよび0.50 mmの変位を周波数5Hzで与え,クラスプの変形に要する荷重量が初期荷重量の15 % 以下に減った場合もしくは1000000 サイクルに達した時点まで行い,荷重量,繰り返し回数,永久変形量を観測した.クラスプを積層方向に対して平行に切断した試料および試料破断後の破断面とクラスプ内面をSEMにて観察した. その結果表面粗さは0°で製作した試料が最も粗く次いで45°,90°の順であった.90°の試料は鋳造で製作した試料と同程度の表面粗さであった.クラスプ内面のSEM像より0°と45°ではクラスプ表面に積層造形時に各積層間で生じたと思われる段差が観察され, 表面粗さはその段差を反映したものである.疲労試験の結果,90°の試料は鋳造体より有意に高い疲労強度を示す一方で0°,45°の試料では鋳造体より有意に低い疲労強度を示すという異方性を示すことが明らかとなった.SEM観察の結果,クラスプ内部には積層方向に平行に伸展したセル状デンドライトが観察され,結晶構造解析の結果より面心立方構造 (fcc) を有するγ層から構成されていることが明らかとなった.疲労強度の異方性の原因としては表面粗さの違いと結晶の配向傾向および繰り返しのレーザー照射による急激な熱勾配に起因した造形体内の残留応力の影響が考えられる. しかしながらそのいずれが決定的な要因かは今後詳細な検討が必要である.
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