研究課題
レーザー積層造形(SLM)法では造形時に繰り返し付与される熱履歴により造形体内に残留応力が発生し、疲労強度や寸法精度に悪影響を及ぼすことが知られている。また造形方向により機械的性質や組織構造が異なる異方性が認められることも問題となっており、積層造形体の疲労強度は造形方向により既存製作方法の30~50%程度まで低下するという報告も認められる。歯科補綴装置には機能時に様々な方向のストレスが生じ、過重負担が原因と考えられる破損も報告されている。そのためSLM法で製作した歯科補綴装置が長期的に安全に機能し、患者のQOLの向上と維持安定を達成するためには異方性制御プロセスの開発が必要である。そこで本研究では異方性の制御を可能とする熱処理条件の解明を目的とした実験を行った。まず、CoCr合金粉末でSLM法にて異なる3種の造形方向(0度、45度、90度)で試料を製作後、異なる条件で熱処理を施した。熱処理条件はアルゴン雰囲気下で、熱処理温度450度、750度、900度、1050度、または1200度で、熱処理時間を1、2、または6時間とした。続いて試料の組織解析と残留応力の評価を行った。結果、精密な温度のコントロールにより、組織学的な異方性を示す特徴的なセル状デンドライトや溶融境界の消失が認められ、結晶構造の制御が図れることが明らかとなった。また、引張試験結果からは、0.2%耐力と最大引張強度の低下と、伸びの向上が認められた。以上の結果より、造形体に適切な熱処理を施すことにより、残留応力の解放と、異方性の制御が実現する可能性が示唆された。
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Journal of the mechanical behavior of biomedical materials
巻: 59 ページ: 446-458
https://doi.org/10.1016/j.jmbbm.2016.02.032